縄田康一さん(53)は、北九州市の不動産会社で21年間働いた経験を生かして、2019年に東広島市西条西本町に空き家を活用する「まちラボ不動産」を創業し、中山間地域を中心に事業を展開している。20年には行政書士と地域づくりに携わる事業主の3人で、空き家に関わるさまざまな問題の解決に取り組む「広島空き家流通促進ネットワーク」を発足した。(山北)
縄田さんは51歳で初めての起業を決意。実績も地縁もない中での立ち上げに苦労したが、さまざまな人にサポートしてもらい「まちラボ不動産」の創業にこぎつけた。自らも空き家活用の一環としてその可能性を探るため、空き不動産を改修し、ゲストハウス「八反」と、立ち飲み屋「ぜろ次屋」を併設、運営している。
東広島市の高齢化が進む中で、空き家問題は今後ますます深刻化していく。2020年には、行政書士と地域づくりに携わる事業主の3人で「広島空き家流通促進ネットワーク」を立ち上げた。空き家売却までの手続きを疑似体験できる、空き家解決すごろく「イエカツ」を作成し、出張講座などで啓発している。すでに空き家になった物件への対応だけではなく、将来的に空き家になりそうな物件への事前対策や、地域での空き家を活用したまちづくりのサポートをする。
「もともといろいろなことに挑戦したいタイプだから、事業を起こすことは苦にならない。収入にはなりにくいが、利益だけを追求するのではなく、本来のあるべき姿で自分のやりたいことをきちんとやりたい」と力強く語る。「夢というかっこいいものではなく、50代にして中二病(笑)。今が思春期」とはにかむ。
「空き家の相談を受けたら、不動産価格が低い場合でも断らない。それが自分のあるべき姿。結果的にまちづくりに貢献できれば」。
朝から夜まで休みなく働く。「1人ブラック企業」と笑うが、「自分で決めてする仕事なので、人に対するストレスはない」と長時間労働も意に介さない。縄田さんは「東広島市が、面白い街になればと思って活動しているので、今後はイベント企画などの取り組みや一般社団法人を立ち上げ、空き家活用に積極的に取り組んでいきたい」と夢を膨らませる。
広島空き家流通促進ネットワークの事業を紹介
〇ゲーミフィケーションを活用した啓発活動
空き家解決すごろく「イエカツ」を使い、両親の死亡などにより空き家が発生してから売却されるまでの流れを、すごろく形式で遊びながら学ぶ。
「イエカツ」を使った勉強会などを各所で開催。
〇 地域で取り組む空き家対策の支援 (東広島市及び近隣市町中心)
空き家問題に対する関心の高い地域の住民自治組織などと協働し、次の取り組みを行う。
・地域内に所在する空き家の調査および物件リスト作成
・空き家や相続に関する相談会や勉強会の開催
・空き家と活用希望者のマッチング支援
・空き家活用の提案および活用物件の運営支援
地域住民と課題意識を共有し、空き家問題に関する理解を深めながら行うことで、まちづくりにもつなげることができる。行政での地域支援の経験が豊富なメンバーを中心に、地域ごとの特色ある取り組みをサポートする。
〇空き家相談のワンストップサービス(東広島市及び近隣市町中心)
空き家に関する諸問題に対応するワンストップの窓口を開設している。当団体のメンバーが初回相談を受け、問題を整理した上で、解決のために必要な専門職や機関、制度などを紹介する。
活動内容
・空き家、空き地、農地等に関するワンストップ相談業務
・ゲーミフィケーションを活用した、啓発活動
・空き家対策、未然対策に関するセミナー活動、講師派遣、出前講座
・行政と連携による空き家対策、相談業務、調査業務
・市内の住民組織などと協力して、空き家情報をウェブ上のデータベースにまとめる活動
縄田さんは「空き家の処分に困っている人や、両親の持ち家を引き継ぐ可能性のある人などに、基本的な流れを知ってもらい、空き家の処分や活用を前向きに考えてもらえたら」と話していた。
営業時間は、午前9時30分~午後5時、不定休。
問い合わせは、電話082-437-5188(まちラボ不動産)。
メール infoakiya@akikatu.net