がん患者や家族、支援者らが集い、自由に語り合う「こころの駅舎」。(一社)東広島地区医師会が2012年から始めた。今年が開設11年目。「主人公のがん患者さんたちに安らぎの気持ちを与えられる、ほのぼのとした空間にしていきたい」と目を細める。(日川)
こころの駅舎は、コロナ禍で開催できないことはあるものの、月に1回の集いが市民に定着している。医師の役割は、「がん患者さんたちが何を悩んでいるのか、しっかり聞いてあげることが第一」と言い、「どうすれば、患者さんたちと気持ちを共有できるか」を問い続ける。
父親は開業医。小さい時から医療が身近だったことと、生き物が好きだったことで、本人いわく「何となく」理系の医学部に進学した。総合病院の勤務医などを経て、1995年、義父が開業していた志和町のクリニック(三木医院)を引き継いだ。
クリニックでは、診察の傍ら、訪問診療にも力を入れる。義父が往診(現訪問診療)を行っていたことから、「自然な流れ」で義父の思いをくみ取った。午前と午後の診察の合間を縫って、緩和治療を希望するがん患者たちを診て回る。
「日頃から、訪問診療でがん患者さんと接しているので、こころの駅舎の集いでも、自然に患者さんと向き合うことができているかな」
診察では「患者さんに寄り添う」ことを心に留める。患者を診るときは、笑顔を絶やさない、という。「治療では、患者さんの気持ちが前向きになることが最も大切。私が怒ったような表情を見せては、患者さんも動揺しますから」と言い切る。
志和町に転居してから四半世紀が過ぎた。趣味の家庭菜園が、患者との会話を弾ませる。訪問診療の途中で目に飛び込む、自然豊かな志和町の四季折々の風景に心が和む。「心温かい人と自然に囲まれ、志和町に住んで良かったなって、心から思っている。志和町は私の仕事の活力源」とほほ笑む。