かつて水田だった棚田に鮮やかな新緑が広がり、牛が悠々と草を食む。東広島市西条町下三永の福成寺に上がる途中の風景。都市化が進む西条に、こんなにも自然豊かな場所がある。
牛を放牧しているのは、福成寺地区の住民で構成する農事組合法人星ふる里(組合員13世帯、今岡良夫代表理事)。現在、13㌶の放牧地で、17頭を飼育している。牛が草を食べることで、景観や生活環境が維持されている。
獣医による種付けや1日2回の餌やりを除いては、人の手を掛けていない。放牧地は柵で囲まれており、牛は好きな場所へ移動しては草を食べ眠っている。
同地区で放牧が始まったのは17年前。高齢化などによって耕作放棄地が増加し、対策として有志でつくる研究会が中心となって放牧を開始。その3年後に法人が発足し、人が集う場所にしようとドッグランや市民農園を設置した。
運営費には国や県の補助金と子牛の販売収入を充てているが、運営状況は厳しいという。後継者不足の課題もあり、「対策を模索している」と今岡代表理事。
豊かな自然の中、たくさんの生き物に出合い、感動するこの場所。多くの人に伝えたい。
写真 井川良成
文 橋本礼子