玄米から米ぬかと胚芽を取り除く「精米」。サタケ(本社・東広島市)では、明治時代に動力式精米機を開発したのを機に、精米機メーカーのパイオニアとして、理想の精米を追い続けてきた。同社顧問で広報フェローの宗貞毅さんに、精米や、日本料理に欠かせない米への思いなどについて聞いた。(日川)
和食との相性抜群
―精米機の開発で心掛けてきたことは。
消費者側と生産者側の双方が求めることを考えながら開発してきました。両者が共通して求めるのは、おいしさであり、粒のきれいさであり、安全安心が担保されていることです。一方で、生産者側は利潤を求めますから、米を割らないこと、つまり歩留まりが高い精米を目指してきました。
さらに、米の状態を見ることの重要性にも着目し、出来の悪い穀物をはじく光選別機や、米粒食味計などを開発。消費者と生産者が理想とする思いを追求してきました。
―精米技術は日本酒の醸造にも変化をもたらしました。
明治時代に動力式精米機を開発したことが吟醸酒の誕生につながりました。その後の精米機の研究開発で、玄米を削って白米にしたときの残った米の割合を示す精米歩合が50%になる高精白も可能にしました。高精白にすることで、日本酒の雑味の原因となる米の表面のタンパク質を除去します。高精白した米を使って醸造された日本酒は、とても上品で飲みやすく、新しい日本酒文化の発展に貢献できたのかな、と思っています。
2018年には、サタケが提唱する「真吟精米」を実現できる精米機を開発しました。真吟精米は、簡単に説明すると、平らな形に米を削ること(扁平(へんぺい)精米)。それまでの精米よりも、タンパク質を効率よく除去します。扁平精米の理論は、1990年代に提唱されたのを機に、サタケで研究開発に取り組んできました。紆余(うよ)曲折はありましたが、工業用の砥石(といし)を使うことで、扁平精米の実用化に成功しました。
―米への思いについては。
日本の和文化の中心にあるものだと思っています。和食は、米や日本酒との相性も抜群です。食以外にも、江戸時代までは貨幣価値を持っていましたし、日本の水田は、日本の原風景の役割も担っています。
近年はさまざまな品種の米が生まれ、おいしさもバラエティーに富んでいます。食の多様化が進み、米の消費は昔ほどではありませんが、日本人には、米は、地味な存在ながらも主食です。ぜひ、いろいろな米を食べ比べてもらって、米の魅力を再認識してほしいですね。
サタケは、収穫した後の籾(もみ)の状態から炊飯に至るまで、米の加工のすべての工程で製品を開発している、世界で唯一の会社。今後もその技術力と総合力を生かし、「おいしい米を届ける要の会社に」と思っています。