寝不足に悩まされないために、今からできる3つの習慣を広島国際大学心理学科田中秀樹教授に伺った。睡眠不足が引き起こす不調や睡眠のメカニズムも合わせて紹介する。
■体温をスムーズに下げ、脳や体をリラックス
「円滑な睡眠」
円滑な入眠のためには、体温がスムーズに下がること、手足から熱放散されること、脳や体がリラックスしていることが大切です。
例えば、赤ちゃんが眠たくなると手足が温かくなるのは、体の体温を下げるために手足から熱放散しているからです。円滑な入眠のためには、頭寒足熱、つまりリラックスしている状態、体温が低下しやすい状態をつくることが大切です。
リラックス方法として、筋弛緩法(きんしかんほう)、香りをかぐ、音楽を聞く、就寝前の温かめの風呂に入るなどさまざま。好みの音楽を聞くことで交感神経系活動を鎮めたり、鎮静効果が期待できるラベンダーやカモミールもリラックスできます。寝る直前の軽いストレッチや足湯(そくよく)は冷え性の人に効果的。また、寝る前の決まった行動(入眠儀式)をするのも効果的で、寝る1時間前から部屋の明るさを半分に落とすだけで眠りやすくなります。
寝る時間の3時間前までに体温を上げるには、夕食を取る、早歩きなど多少汗ばむ程度の運動をする、熱めのお風呂に入るなどがあります。寝る直前にこれらをしてしまうと体温が下がるのを邪魔してしまい、眠りにくくなってしまうので要注意です。
■体は夜つくられる。睡眠の三つの役割
睡眠には、浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」があり、それらがセットになって約90分周期で繰り返されます。主に体が休むのがレム睡眠。このとき脳は活発に動いているため、夢を見る。一方、ノンレム睡眠では脳がしっかり休み、体の中では成長ホルモンなどが分泌されて修復作業が進みます。
「クールダウン」
私たちの脳は常に酷使され、ヒートアップ気味。睡眠中は疲れた脳を休ませ、クールダウンさせる大切な時間帯です。人間の睡眠自体、発達した脳を効率的に休ませるために進化してきました。もちろん、体の休息にもつながる大切な役割をになっています。
「修復・再生」
日中の活動で傷つき消耗した細胞や組織の修復が、眠っている間に行われます。素材となるたんぱく質の合成は、睡眠中に高まります。睡眠時間が足りないと修復作業も間に合わず、心身のメンテナンスが不完全になります。
「翌日への備え」
眠りの後半にはコルチゾールというホルモンが増え、やる気やストレス抵抗力、免疫力などが強化されます。今日の眠りは、まさに明日への備えです。
■呼吸を繰り返して自律神経の働きを整える
自律神経に対して効果的なのは、呼吸です。ストレスなどで眠れない人は、交感神経が過敏になっていることが多い。呼吸を上手に使って自律神経のバランスを整え、睡眠の質を上げましょう。ゆっくり長めに息を吐くと、リラックスモードの副交感神経が優位になります。
イライラしがちな人は交感神経が優位になっているので、ゆっくりと吐くことを意識した呼吸法がおすすめ。
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