家や建築に関するさまざまな話題を紹介します。
コラム/一級建築士
栁河元木さん(アリクデザインスタジオ代表取締役)
目次
【1】新築・建て替えがいい? それともリフォーム?
最近、「家を新しくするのは待った方がいいですか?」とよく聞かれます。新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ情勢などの影響で、建築材料や労働力が高騰しているためです。
少し待つと落ち着くかもと期待したくなりますが、材料の品質も上がっていますし一度上がった値段はそう簡単に下がりません。家を新しくするタイミングの正解は、あなたに必要なとき。結婚や同居、子どもの進学、家族構成が変化するときです。
【2】今、平屋が増えている理由
東広島市内をドライブしていると、新築の1階建て住宅「平屋」をよく見掛けるようになりました。
国土交通省の調べによると、居住するための住宅の着工棟数の平屋の割合は、2020年が11・20%。6・19%だった10年前と比べ倍増しています。
【3】空き家活用法
今や社会問題にもなっている「空き家」。長くそのままにしている「空き家」、いずれ実家を相続するけど住む予定はない「未来の空き家」もあると思います。先祖から受け継いだものだから手放したくないという思いもあり、答えが出せないという方も多いのではないでしょうか。
使っていなくても、所有しているだけで固定資産税はかかります。いつかはなんとかしなければならない、できるだけ早く解決したい問題です。
【4】家庭内事故のリスク回避
暑い日が続きますが、今年も寒い冬が必ずやってきます。居室が暖かい分、廊下やトイレ、浴室が極端に寒いという家庭は多いのではないでしょうか。浴室内外の気温差が引き起こす「ヒートショック」は、心筋梗塞や脳卒中などを起こして死に至るケースもあり、深刻な問題です。
家庭内の事故で亡くなる人の数は、交通事故の約4倍といわれています。厚生労働省の人口動態統計(2020年)によると、不慮の事故で亡くなった人の原因の上位は、ヒートショックによるものも含まれる「不慮の溺死・溺水」や「転倒・転落・墜落」でした。
【5】注目の“付かず離れず”の二世帯住宅
近年、「安心感が得られる」と親との同居が住まいの選択肢にあがるようになりました。その背景には、共働きで子どもを見守ってほしいから、災害が続き家族のきずなを大切にしたいから、また親の介護や空き家対策でという理由があるようです。
さらに、コロナ禍で在宅勤務が増え、同居なら子どもをさっと預けやすいというメリットもあります。
【6】ヘリテージマネージャーとして酒蔵通りへ
広島県には重要伝統的建造物群保存地区(以後、重伝建)が現在4カ所あります。竹原、御手洗、鞆の浦、宮島。私は竹原の町並みが好きで、近くに行くと訪れています。メイン通りから1本中に入り、表からは見えなかった古いままの状態を見つけては築年数や当時を想像して楽しんでいます。
【7】趣味を楽しむ家づくり
ビルトインガレージを好む人が増えています。住宅の1階に駐車スペースを設けてシャッターを取り付け、建物内部に車を収めるガレージです。車を雨風や紫外線、寒さや暑さ、いたずらや盗難から守ることができます。車を動かしてお子さんの遊び場などプライベート空間として使えます。車から室内まで雨に濡れずに移動でき、快適です。
【8】東広島あるあるを解消し、地球を守る家づくり
今年のお正月は過ごしやすい日々でした。といっても、外は暖かいのに家の中が寒い、という「東広島あるある」を実感した方も多いと思います。
家を暖かくするには、高気密高断熱化が効果的です。断熱性能が低いと、家の中を暖めても熱が外に逃げ、光熱費は高くなる一方。光熱費を抑えるには、エネルギーの消費量を減らすための住宅の高断熱化が欠かせません。
【9】進化する子育てする家 「キッズ住宅」
最近は「長時間過ごしても仲良く」の実現がポイントで、家族との「程よいつながり」と、リモートワークやオンライン授業にも対応できる「おこもり」を両立させていきます。住宅の広さは変えられないので、優先順位で割り当てる広さを決めていきます。傾向としては、リビングなど家族との共有部分はできるだけ広く、子ども部屋や寝室、書斎などの個室は必要最小限の広さに抑える家庭が増えています。
【10】家づくりの「どっちがいい?」問題
ホール階段とは、玄関からリビングなどを通らず2階に上がれる階段。リビング階段に比べて家族と顔を合わせる機会は少なくなりますが、子どもが成長した二世帯住宅などで、家族の生活スタイルが異なる場合はほどよい距離感を保ちながら暮らせそうです。1階で食べた焼き肉のにおいが2階の寝室に充満することもありません。
リビング階段は家族が顔を合わせる機会が増えます。デメリットとして吹き抜けになることが多いため、空気が温まりにくく寒くなりがち。これは、家の気密性を高める、階段入り口に引き戸を付けることなどで防げます。
【11】家の日当たりは「南向き」がベスト?
リビングや寝室、子ども部屋など生活する部屋「居室」では、建築基準法で床面積の7分の1以上の開口(窓)面積が必要とされています。7分の1の開口は「日当たりがいい」とも言い切れず、お隣と近かったり周りに高い建物があって時間帯によっては日陰になったりということもあります。
家を建てるときや部屋を借りるとき、南向きを希望される方が多いと思います。実際に、南向きの土地の方が値段も高めです。
【12】仕事との向き合い方
1974年、東広島市生まれ、東広島市育ち。工業高校では測量やものづくりの実習が好きでした。地元での就職を考えたときに弊社の前身である大江設計事務所を紹介され、「設計事務所の仕事は面白そう」という漠然とした理由で入社しました。
当時は平成不況でしたが、東広島市は広島大学の移転によりアパートが続々と新築され活気のある時代でした。弊社も同様に学生用マンションを中心に、現会長の人柄で工場、病院、店舗、住宅など幅広く手掛けていました。
当時の代表の大江弘康さんは「いただいた信頼を仕事で返す」というポリシーで休みなく仕事をする人。その姿から仕事は人間力なのだと教えてもらいました。