T・ジョイ東広島:オープンから1カ月。今後の展開は
デジタル処理された画像を、通信衛星を介して受信し上映する新しい形の映画館「T(ティ)・ジョイ東広島」。営業開始から1カ月以上が経過し入場者数は順調に伸びている。出店までの経緯や、今後の展開などを岡田裕介社長に聞いた。(西岡)
(ザ・ウイークリー・プレスネット 2001年1月20日号より)
ーオープンから約1カ月が過ぎましたが現状は。
入場者数は予想以上に伸びている。通常、シネコン(シネマコンプレックス=複合型映画館)の場合は徐々に入場者が増えるものだが、東広島市では状況が違っている。
ここには全部で6つの映画館があり、それぞれに特徴を持たせている。音響面ではボーズ社(アメリカ)の最新サウンドシステムを導入し、スクリーンはゲレッツ社(ドイツ)の特殊素材を使ったものを採用している。現時点で、国内では最先端の映画館だと断言できる。
ー世界初の試みである通信衛星を使った映像配信を、東広島市で実施された理由は。
個人的には2年ぐらい前から衛星を介した映像配信の構想を持っていたが、話が具体化したのは1年ぐらい前だった。私としては、デジタル映像もフィルムも両方を使用するシネコンにしたいという思いがあった。しかし、シネコンの開設にはかなり広い店舗スペースが必要で、デベロッパーさんの多くは売り上げに直結しない広いスペースを、店内に設けることを敬遠されることが多かった。
東広島への出店は、フジさんのご理解で実現した。フジさんとしては当然、映画館ができたことによる集客効果を期待されていると思う。我々としてはフジグラン東広島店全体が潤うように努力したい。
ー映画の配給面で、問題点などはありませんか。
オープン時には「長崎ぶらぶら節」の映像を衛星を通じて受信し上映した。現在はDVD(デジタルビデオディスク)による配給がメイン。配給面での問題はない。今後の衛星配信の予定についてはコスト面などを考慮しながら計画を練っている。技術的な問題はクリアしているが、著作権について調整が必要だ。
―国内映画界の現状は。
日本の映画界では長い間、東宝系と松竹・東映・東急系という二系列ができていた。ところが、ここ数年、外資系配給会社の参入によってフリーマーケット的な流れができている。こうした業界の動きなどを背景にして、衛星配信の発想などが生まれているのだと思う。既にさまざまな業界でデジタル化が進んでいる。映画界だけが昔のまま、という訳にはいかないだろう。
ーテレビの普及によって、人々の映画離れが進んだといわれますが。
映画は、テレビで表現できないものを取り上げていくべきだ。先ごろ話題になった「バトル・ロワイアル」は賛否両論ありはしたが、全国では140万人(1月12日現在)を動員し、売り上げは20億円に達した。東広島でも動員数6000人で900万円を売り上げている。
現在は、多くの人がテレビを「無料で見ている」感覚だと思う。しかし、昨年12月から始まったBSデジタル放送のように有料化の動きも出始めている。逆に映画界は低料金化に向いていると思う。東映としては50周年を迎えた今年、高倉健主演の「ホタル」や吉永小百合主演の「千年の恋」、懐かしいテレビドラマの忍者赤影を映画化した「RED SHADW 赤影」などの大作を用意し、市場に投入する計画だ。
ー今後の課題などは。
どう集客数を伸ばしていくかが大きな課題。そのためにはこの地域に合った運営が必要で、ファミリー層・熟年層・青年層に大別して、それぞれに合うサービスを提供している。例えば、お年寄りを対象にシニアカードを発行し、お年寄り優先のサービスを実施しているほか、上映スケジュールにおいては、昼間はお年寄りに見ていただけるような作品を上映し、夕方からは若者向けの作品といった具合に、時間帯によってプログラムを変えフレキシブルに対応している。