東広島の建物に注目した特集「建物見学」。気になる建物のこだわりポイントや込められた思いなどをリポートしていきます。今回は広島マツダ西条店と旧石井家住宅。
目次
車との物語が始まる場所
曲線や自然でやわらかい空間にドラマチックな演出も
東広島市西条町助実の国道375号沿い、ガラス張りで落ち着いたデザインの建物が目をひく。2022年にこの場所に移転オープンした広島マツダ西条店のコンセプトは、「マツダと共に旅の記憶を紡ぐ特別な思い出を造り出す空間」。
玄関を入ると、吹き抜けの高さを生かしたダイナミックな美しい曲線の天井が広がる。まるで明るいトンネルの中にいるようで、ドライブのわくわくを思い出させてくれる。受付や展示車を見ながら進むとらせん階段があり、上がるとショールーム。
階段にもショールームにも植物の装飾がたっぷり。天井には有機的な形の段差を付けた照明があり、気持ちがやわらかくなるような空間。車とのさまざまなシーンを思い描けるよう、日常に点在する自然、カフェ、リビングスペースなどを設け、その中に車を配置している。バーカウンターやDJブースもあり、パーティーやイベント会場としても使用されている。
納車をするときの部屋が1階にある。ソファに座り、説明を受けた後、スタッフがスイッチを入れると仕切りの曇りガラスがクリアになり、これからの相棒となる車と対面。「物語がここから始まる」という意味を込めて、経度緯度の数字が壁にデザインされている。なんともドラマチックな演出。
車と共に生活する楽しさを感じさせてくれる建物だ。
建物情報
ガラス張りの外観。1~2階がショールーム、3階が中古車展示場、4階は駐車場。店舗の前に並ぶのは試乗車
広島マツダ西条店
【住所】東広島市西条町助実1516-1
【電話】082(423)2646
【ショールーム営業時間】10:00~18:00
【サービス受付時間】10:00~17:00
【定休日】火曜日
229年前の木材残る当時の暮らしに思いはせ
大きな吹き抜けに太く曲がった梁
江戸時代の1795(寛政7)年に建てられた旧石井家住宅が東広島市西条町下見にある。もともとは西条四日市(現在の西条酒蔵通り)にあり、旅籠(宿)や酒造業、薬店を営んでいた。
西条四日市の町並みを代表する町家で、1993(平成5)年に市重要文化財に指定された。97(同9)年に現在の場所に移築。一部を復元した。
屋根は正面から見ると甲冑のかぶとのように見える「かぶと造り」。小さな戸をくぐるとL字に土間が広がる。土間に沿って右側に8畳間が計6室並ぶ間取り。入ってすぐのその1室が「ミセ」と呼ばれる販売スペース。向かいにある「コミセ」と呼ばれる部屋と、建物の前半分の2階は、物置などに使われていたとみられる。
L字の突き当たりに行き、見上げると吹き抜けが広がる。天井の窓から光が差し込み、大きな梁や柱が存在感を放つ。柱は栗の木。「腐りにくいが狂いやすいため、長時間乾燥させる必要がある難しい材木。それをあえて使っているという点が面白い」と市教育委員会文化課。太く曲がった梁は松の木。粘りがある材質で、屋根の重さがかかっても折れにくいという特徴がある。
建築面積204・6平方㍍の大きな住宅で、屋根が高く瓦ぶきであることから、住宅の中は夏でも涼しい。こういった気温も感じながら当時の木材に触れたり、座敷に座ったりしていると、当時の暮らしの想像が膨らみ、楽しいひとときを過ごせた。
建物情報
旧石井家住宅
【住所】東広島市西条町下見1086-1
【電話】管理棟082(421)6393
【開館】10時~17時(12~3月は16時まで)
【休館】月曜日、年末年始
【入館料】一般150円