1/14

(TUE)

記者座談会 東広島2018年を振り返る

  • 2022/12/21

 第5代目となる新市長の誕生から始まった2018年の東広島市。今年の市のキーワードを3つ挙げれば新市長、西日本豪雨、映画「恋のしずく」だろう。時事通信社広島支社・編集部長の阿萬英之氏、地域経済ジャーナリストの田辺裕視氏、本紙編集委員の日川剛伸氏が2018年東広島を振り返った。聞き手はFM東広島パーソナリティーの間瀬忍。

キーワードは新市長、映画、災害

新産業創出に期待

―2月には高垣広徳氏が新しい東広島市長に就任されました。

時事通信社広島支社
編集部長
阿萬英之氏

日川 初めての市外出身者の市長。これまでにない試みとしては、市長自らが、市政情報を発信する場として毎月、定例記者会見を開いたり、市内各地区に出向いて住民自治協のメンバーと意見交換をしたり、と。市民との距離感を大切にしながら、何事にも真摯に取り込む市長だなという印象を持っている。

阿萬 定例記者会見では事前に議題が発表される。取材がやりやすく、とてもオープンな自治体だ。

田辺 尾道市出身の高垣市長は県の副知事まで務めた人で、真面目にコツコツ積み上げていくタイプ。選挙公約の柱だった産学官連携を確実に進められており、有言実行の市長だなと感じる。東広島市をどう魅力ある都市に変えていくのか、今後に期待する。

―情報発信という観点からは、西条酒をテーマにした映画「恋のしずく」が公開されました。

阿萬 私は宮崎県出身で、広島には7月に赴任した。西条が酒どころである ことは知っていたが、風情ある酒蔵が集積していたり、吟醸酒発祥の地であったりしたことは全く知らなかった。県外にはまだまだ浸透していないのが実情で、映画が、県外の人に東広島をPRするきっかけになればいい。

地域経済ジャーナリスト
田辺裕視氏

田辺 市民にとっては、知っている人が見たり、見慣れた風景が出て きたり、と見る価値があった映画といえる。問題は県外の人が、この映画をどう感じたかだ。

日川 配給会社の資料では、12月中旬現在、全国で約3万5000人が、この映画を見ている。うちT・ジョイ東広島に足を運んだのは約1万2000人。内向きには盛り上がった半面、外向きには今一つだったのかなと思う。

田辺 2019年の酒まつりで、入込観光客がどの程度増えているのかを検証することで、映画の費用対効果を検証できるのではないか。

阿萬 西条の酒には、歴史・文化のストーリーがあり、人を引き付ける要素を持っている。酒や酒文化を1カ所でまとめて楽しめる場所をつくれば、もっと観光客を呼び込める。

―7月には西日本豪雨災害が発生しました。復旧状況は。

日川 印象に残っているのは、市民の足を確保するための対応。寸断されたJR山陽線の白市―八本松駅間で部分運転を再開させ、その際に市長が先頭に立ち沿線の学校に始業時間を遅らせてもらったり、企業に時差出勤を呼び掛けたりした。3両編成の車両では、運べる人数が限られるからだ。

田辺 部分運転とはいえ、3両を走らせたことはすごいこと。市内間の通勤・通学者にとってはありがたいことだったと思う。

プレスネット編集委員
日川剛伸氏

阿萬 公共交通は復旧したが、産業面では中小企業を中心にまだら模様の復興状況だ。安全の確保には公共投資も必要になる。

田辺 完全復旧には30年以上かかる。ただ、活発な公共投資は、土木・建設業界に人手や重機の不足をもたらしている。 今後の課題になるだろう。

日川 西日本豪雨では、多くの課題が浮き彫りになった。それらを踏まえ広島大では、災害を軽減するための研究組織を大学内に設置した。研究成果の地域還元を期待する。

―7月には西日本豪雨災害が発生しました。復旧状況は。

阿萬 地方がいつまでも活性化していくためには、農業の6次産業化や産学連携で新しいビジネスを創出することなどが必要になる。幸い東広島市には大学の集積など魅力的なコンテンツがたくさんある。発展のためのポテンシャルは高い。

日川 広島市になくて東広島市にあるものは広大な土地。生かさない手はない。もっと工業団地や産業団地などの集積を図り、人が集まり雇用を創出する都市になってほしい。

田辺 市の発展には潜在人口を増やすことが第一。人が住むことで、消費が起こり、民需拡大が促進され経済活動が活発化する。企業誘致では、国内企業に執着するのではなく、先を見据えてアジア極東地域に目を向け、グローバル企業を誘致するメカニズムを作ってほしい。

12月31日(月)20時台 FM東広島(89.7MHz)で放送

おすすめ記事

新着記事