新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、雇用を取り巻く環境は悪化している。コロナを起因とする広島県内の解雇・雇い止めは5月末で410人に上り、さらに増え続けている、という。東広島市を管轄するハローワーク広島西条で、働き口を失った人たちや、再就職活動に取り組む人たちの思いに迫った。
(日川)
―求人数は減少。ままならぬ再就職
今回、コロナのあおりを受けているのが非正規雇用の人たちだ。「不安定な身分だから、おどおどしていたら、やっぱりかという感じだった」。高屋町の男性元派遣社員(40歳代)は頭を抱えた。マツダ関連企業で働いていたが、工場の操業停止に伴い、5月に派遣会社から解雇を告げられた。
西条町のシングルマザーの女性(30歳代)も突然失職した一人だ。パートとして働いていた大阪市内のアパレル店の経営が傾き、解雇された。「とてもじゃないけど家賃も払えなくなる」。仕方なく今月、東広島の実家に戻った。「弱いところにしわ寄せがくるのを感じた」と振り返る。
ハローワーク広島西条管内で、4月に事業主都合で退職した人は前月と比べ54人増の82人に上る。非正規雇用の人たちを中心に相談が後を絶たないという。
再就職がままならないのも現実だ。同菅内の求職者一人当たりの求人数を示す4月の有効求人倍率は2・22倍だったが、4カ月連続の減少となった。4月の新規求人は1805人と前年同月と比べ53・8㌽減少。製造業は前年同月比で67・9%減った。
「仕事はすぐに見つかると思っていたが甘かった。自動車関連の求人はほとんどない」。前述の男性はため息をつく。3月に小売業の会社を退職した60歳の女性は、何度か企業と面接したが不採用だった。「コロナで企業の採用意欲が衰えているのを感じる。60歳を過ぎると再就職は厳しくなる現実を突き付けられている」と話す。
―「就職難に立ち向かう」
コロナ禍は、一度就職が決まっている人たちにも影を落とす。八本松町の男性(40歳代)は、全国でチェーン展開する飲食業に就職が決まり、5月から勤めることになっていたが、夏以降に先送りになった。「採用の取り消しではないが、明日が見えない現実に不安感は拭えない。今は失業給付でしのいでいる状態。家族の生活設計のことを考えると、別の仕事を探す可能性もある」と嘆く。
一方で、先行きが厳しい状況は、求職者の意識に変化をもたらしているようだ。前述の男性元派遣社員は「(失業は)あっさりと職を失う立場だった自分にも非がある。この機会に正社員として働くことを考えてみたい」と前を見据える。
春に食品製造関係の会社を離職した志和町の女性(40歳代)は、希望する職種が見つからない現実と向き合う。「なかなか再就職できないのは、自分のキャリア不足もある。職業訓練校に通ってスキルアップ。コロナ禍の就職難に立ち向かっていきたい」と意欲を見せる。
失業者の就職あっせんに取り組むハローワーク広島西条では「求職者の人たちに伝えたいのは、就職を諦めないこと。全国の求人情報を知ることができるハローワークのネットワークを使い、それぞれに見合った求人情報を提供していきたい」と言い切る。