新型コロナウイルスとの戦いは長期戦になりそうだ。東広島市民や中小事業者たちはこれからどう向き合っていけばいいのだろうか。東広島市の高垣広徳市長と木原和由商工会議所会頭に、これまでの支援策などを振り返ってもらいながら、今後への思いなどを聞いた。
(聞き手・日川)
非接触見据えデジタル化を加速 事業者の思いに応える
―これまでの支援策を総括してください。
まずは予備費を使い感染予防に必要なマスクや消毒液などの確保に努め、医療機関や介護施設、社会福祉施設などに無償で配布し感染防止に努めてきた。ドライブスルー方式によるPCR検査体制も早めに整えた。補正予算の措置に関していえば、国の補正予算成立よりも前に第1弾を打ち出し、その後、6月上旬までに第4弾を打ち出した。
―国民一人当たりに10万円を配る特別定額給付金事業の状況は。
県内の他の市町と比べても早い時期(5月20日)に支給を開始することができた。現在、97%の市民に給付を終えている。コロナ禍でアルバイトを失った市内の大学生を臨時に任用し、発送の事務作業を補助してもらったおかげだ。
―子育てや事業者支援にも積極的に目を向けられました。
学校のオンライン授業を補完する仕組みを早くつくる必要性を強く感じたため、国の「GIGAスクール」推進に呼応し、来年早々には市内の全児童生徒にタブレットが届くよう前倒しで予算措置を講じた。ひとり親世帯には独自の給付金を支給する取り組みを、事業者には新たなビジネスモデルへの転換に対する支援などを、それぞれ行ってきた。
―スピード感を持って取り組まれました。
市民が必要とする施策をいち早く察知し、実行することが重要だと思っていた。予算を編成する際には、市感染症連絡会を設け、市内の関係機関から状況を聞きながら的確に対応したつもり。ただ、第二波への懸念もあり今後も支援策は講じていく。感染防止に努めながら、消費拡大につなげていく。その両立を図る観点が大切になるだろう。
―市民の意識についてはどう捉えていますか。
3月下旬から5月上旬にかけては、実態の分からないコロナウイルスに対して、強い不安感を持っていたと思う。その後は、ウイルスや感染予防策などの情報があふれるようになったことと、マスクや消毒液も充足してきたことで、以前ほどの不安感はないように感じる。これからはコロナウイルスとどう関わっていくか、ということに市民の意識が向けられていくのではないか。
―今後の取り組みで大切になることは。
「ウィズコロナ」や「ポストコロナ」といわれるのは、そのウイルスとの戦いが長期戦になると予想されるから。そうした中でキーワードになるのが非接触。本年度の当初予算でも打ち出したが、テレワークや遠隔教育など、デジタルを利用したデジタルトランスフォーメーションの取り組みをさらに加速させる必要がある。その第一歩はICチップ付きのマイナンバーカードの所有率を高めていくことだ。私は新型コロナウイルスは「令和の黒船」なのかなと思っている。過去の歴史を振り返ってみても、転換期には必ず感染症があり、時代の変革を促してきた。ポストコロナは、「さすが日本」と言える国になっていたい。
―市民に強く発信したい思いは。
「正しく恐れること」を伝えたい。そのためには、市として正確で迅速な情報発信に努める。もう一つはウイルスに負けないよう、免疫力を高めてほしい。孤立や運動不足が心配される高齢者には、スマホなどを利用した新しいコミュニケーションや、家庭でも簡単にできる運動などを紹介していく。
―コロナ後を見据えたまちづくりをどう描かれていますか。
地方分散型の時代は広まるだろう。その風を受けながら、選んでもらえるまちにと思っている。そのためには、持続可能なまちであり続けることが問われている。「誰一人取り残さない」という理念を掲げる国連のSDGsの考えをベースにしながら、多文化共生のまちをつくっていく。
▼新型コロナ、東広島市の取り組み