福富町上竹仁にたたずむ「スドウ雑貨店」。絵描きの周藤翔太さんと、レザー作家で翔太さんの妻の友里耶さんが夫婦で営む雑貨店が、訪問カットの「スドウ整髪店」をスタートした。実は翔太さんは美容師の資格を持つ。“雑貨屋さん”が、また“美容師さん”を始めた理由を聞いた。(小林)
自身が描いた絵の前で妻・友里耶さん(左)、娘の千鶴ちゃんと談笑する周藤さん(撮影・小林)
福富町に移住して8年。呉市の団地で育った翔太さんは、福富の方たちのことを「心の距離は近い。でも適度な距離も保ってくれる。ほどよい距離感のご近所付き合い」と言う。同じ福富町の宅配料理店「石川商店」で宅配の手伝いをしていることもあり、高齢者と接する機会が多い。
呉市に住んでいたときは、4年間、美容室に勤務していた翔太さん。退職してからは、家族の髪をときどき切る以外、ハサミを持つことはなかった。しかし、福富町で住民の声を聞くうちに、「持っている資格を生かせるのでは」と考え、訪問カット「スドウ整髪店」のスタートを決めた。
コロナ禍を経験して在宅ワークやオンライン会議が一般的になったように、「もっと訪問美容の需要が高まるのではないか」と感じたことが、今回の新たなサービスにつながったという。
美容師としてはブランクのある翔太さんだが、「資格は持っているけど美容業から離れている『休眠美容師』を巻き込んで、県全域でこのサービスを組織化していきたい」と夢を語る。
現在提供しているサービスはカットのみ。美容師としての感覚を磨きながら、軌道に乗った暁には、シャンプーなどサービスの拡大も検討するという。利用者が準備するものは自分が座る椅子と、2畳分ほどのスペースだけ。自ら美容院に行くことが難しい人はもちろん、育児や介護で家を離れられない人も訪問カットを利用できる。
スドウ雑貨店 代表 周藤翔太さん
「スドウ雑貨店」の魅力に迫る
田園風景が広がる福富町上竹仁。古民家の敷地の一角に、白い壁の雑貨屋さんがあります。 この5月に開店4周年を迎えた「スドウ雑貨店」で、絵描きの夫翔太さんと、レザー作家の妻友里耶さんが夫婦で営む雑貨店です。
店は、夫婦の穏やかな雰囲気が、そのまま形になっているようです。
周藤さんは、呉市から広島市を経て、2013年に福富町に移住し、友里耶さんと結婚。2017年スドウ雑貨店を開店し、「田舎で小さな雑貨店を開きたい」という友里耶さんの夢を実現しました。
友里耶さんは専門学校で革細工を学び、その後もレザークラフトを趣味にしていました。雑貨店という夢がかない、あたたかみのある手縫いのレザー小物を店に並べています。
翔太さんは、小さい頃から絵を描くことが大好き。移住したばかりのときには豊栄町の工場に勤務していましたが、現在は絵描きとしてオーダーメイドの油絵の他、1枚ずつ手書きするオリジナルTシャツなどを制作しています。
店内には他にも、天然素材にこだわった布製品や、地域の方が作った雑貨を取りそろえています。
福富町に住んでみて
周藤さん夫妻は、福富の暮らしを気に入っていると言います。近所の方が収穫した野菜を分けてくれたり、子どもたちが道を歩いていると自然と声を掛けてくれたり。「地域民全てが子どもを育ててくれています」と話していました。