時事通信社
広島は6日、76回目の原爆の日を迎えた。広島市中区の平和記念公園では市主催の平和記念式典が開かれ、被爆者や遺族、菅義偉首相ら約780人が参列。松井一実市長は平和宣言で「日本政府は一刻も早く核兵器禁止条約の締約国となり、核保有国と非保有国の橋渡し役を果たしていただきたい」などと訴えた。
式典には83カ国と欧州連合(EU)の代表が出席し、原爆投下時刻の午前8時15分、「平和の鐘」に合わせて1分間の黙とうをささげた。
松井市長は平和宣言で「核兵器はいらないという声が市民社会の総意となれば、核のない世界に向けての歩みは確実なものになっていく」と強調。被爆の実相を「守り、広め、伝える」ための活動を続け、「為政者の政策転換を促す環境づくりを進めていく」と誓った。
日本政府には核兵器禁止条約の早期批准と第1回締約国会議への参加を要望。原告側勝訴が確定した「黒い雨」を浴びた市民らの早期救済や支援策の充実を求めた。各国には「核で相手を威嚇する発想から、対話を通じた信頼関係を基に安全を保障し合う発想への転換」を強く要求。核拡散防止条約で義務付けられた核軍縮の誠実な履行を要望した。
菅首相はあいさつで「核兵器使用の非人道性に対する正確な認識を継承し、被爆の実相を伝える取り組みを引き続き積極的に行っていく」などと述べ、「黒い雨」救済については「早急に検討を進めていく」とした。
国連のグテレス事務総長は昨年に続きビデオメッセージを寄せ、「核のない世界というゴールに向け進展が見られない」と指摘。「核兵器が使用されないことを保証できる唯一の方法は核兵器の完全な廃絶だ」と訴えた。
宣言後、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で見送られた放鳩が行われ、高校生による合奏と合唱も規模を縮小して実施された。
式典では、松井市長と遺族代表が、この1年間に死亡が確認された4800人の名前を記した原爆死没者名簿を慰霊碑に納めた。犠牲者は32万8929人となった。厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ人は今年3月末時点で全国に12万7755人。平均年齢は83.94歳で、昨年より0.63歳高くなった。
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