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(THU)

「相撲の魅力を次世代に継承したい」 竹原高校 相撲部監督 谷崎大樹さん

  • 2021/10/12

 小学校のときから土俵は生活の一部だった。選手としては何度も全国大会に出場。指導者としては県内の高校で唯一、相撲部がある竹原高校で生徒に向き合う。「相撲の魅力を次世代に継承するのが僕の使命」と言い切る谷崎大樹さん(33)に迫った。(日川)

 

谷崎さん1

 

 相撲が盛んな竹原市で生まれ育ち、小学校2年生のとき、地域のわんぱく相撲大会に出場。まわしを締めてぶつかり合う、相撲の面白さを知るのに時間はかからなかった。中学校では柔道部に所属する傍ら、市内の相撲道場に通い、稽古に励んだ。

 

 高校、大学と相撲一本に打ち込み、全国のひのき舞台を踏むようになった。特に角界に力士を送り込むなど相撲の強豪で知られる日体大では、「厳しい稽古のおかげで心身ともにたくましさが身に付いた」と振り返る。

 

 妥協を一切しなかった稽古姿勢は、全国学生相撲個人体重別選手権の100キロ未満級で3位入賞となって実を結んだ。「僕にとっては宝物の大学生活」を過ごし、母校の竹原高で指導者の道を歩み始めた。

 

 「人間的な成長なくして競技力の向上はない」―。指導の根底に据えている思いだ。単に強いだけの選手は、つぶれていくリスクが高いことをつぶさに見てきたからだ。

 

 技術的には、「相手を押すこと」にこだわる。押すというシンプルな動きに、相撲の奥深さがある、という。「相撲はバランスの崩し合い。いかに相手のバランスを崩すか。そのためには、立ち合いから低い姿勢で相手に当たって押していくこと」。その信念を貫き、生徒に接する。

 

 週に2日は、自身が中学校まで通った道場でも、小中学生に指導する。まさに相撲漬けの毎日だ。「僕が今あるのは相撲のおかげ。相撲をやって良かったと思える子どもたちを育てながら、相撲の競技人口を増やしていくことが、恩返しになる」と目を輝かせる。

 

PROFILE
たにざき・だいき 1988年生まれ。竹原高、日体大卒。卒業後、保健体育の教諭となり、竹原中勤務だった2019・20年度を除き、竹原高で相撲部の指導に当たり、生徒たちを何度も全国大会出場まで導く。選手としては一昨年まで現役生活を送った。県相撲連盟事務局長も務める。

 

谷崎監督と一問一答

―相撲の魅力は。
 「小よく大を制す」ことに尽きますね。相撲は、スピードと技があれば、たとえ自分の体より倍近い相手であっても勝つことができます。僕自身も、体重は100㌔に満たなかったけれど、スピードと技を磨いて、大きな相手に勝負を挑んでいました。

―相撲の難しさは。
 相撲は一瞬の勝負。頭のなかで「ああだ、こうだ」と考えて相撲を取っていては、勝負になりません。頭で考えなくても、体が自然に反応できるようになることが大切です。そのためには稽古。体がしっかり覚えるよう、根気よく指導することを心掛けています。

谷崎さん2
部員に指導する谷崎監督(右から2番目)
谷崎さん3
自ら胸を出し部員を指導する谷崎監督(右)

―県内の高校では唯一の相撲部です。
 僕の大きな夢は、広島県を相撲の強豪県にすること。竹原高に相撲部ができる前は、県内の高校に相撲部がない時期が続き、広島県からは数年間、インターハイに出場できませんでした。そんなことがないよう、竹原高や竹原地区から相撲のだいご味を発信、相撲のすそ野を広げ、広島県を相撲が盛んで強い地域にしたいと願っています。

―竹原高相撲部の悩みは。
 やっぱり部員が少ないことですね。毎年、男子を中心に10人前後で推移しています。相撲は、立ち合いに頭で相手にぶつかることが基本ですから、怖いというイメージが先行し、それが相撲を敬遠する理由の一つになっているようです。 ただ、稽古を積み重ねていけば、自然に怖さもなくなってきます。相撲は高校から始めても、決して遅くないので、多くの生徒に入部してほしいですね。女子も大歓迎です。

―相撲部を卒業生の多くが大学や社会で活躍しています。
 高校時代、インターハイなどの全国大会に出場できた生徒も、そうでなかった生徒も、卒業後にさまざまな分野で活躍している姿を見たり、聞いたりするとうれしくなります。大学に進んだ生徒は相撲を続け、高いレベルで輝いています。社会人になった生徒は、それぞれの仕事で頑張っていますし、相撲部の後輩が出場する大会の運営を手伝ってくれたりします。
 「相撲で受けた恩は相撲で返せ」。僕が3年間で生徒たちに繰り返し伝える言葉です。卒業生は、僕の言葉を実践してくれているようで、指導者冥利に尽きますね。

谷崎さん4
今年の新潟インターハイに出場した竹原高相撲部員と
谷崎さん5
2018年時の竹原高相撲部員と

―プロ(大相撲)の力士を育てたい思いは。
 こればかりは本人の意志次第です。いくら素質があったとしても、本人の強い覚悟がないと、プロの世界では生きていけません。余談ですが、僕の大学時代の1学年先輩に現在、幕内で活躍する妙義龍関、1学年後輩に千代大龍関がおり、一緒に稽古をしましたが、当時からものが違っていました。

谷崎さん6
2017年の国体広島県予選に出場した谷崎監督(左)
谷崎さん7
2015年の和歌山国体に出場した現役時代の谷崎監督(左)

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