
「まさに身が引き締まる思い。重責を担うことになり、毎日が緊張の連続」。東広島市教育委員会の教育長に就任して1カ月余り。一言ずつ言葉を選びながら、61歳での新たなキャリアのスタートに思いを馳せる。(日川)
前任は龍王小の校長。大規模校だった新設校のかじ取りを担った。全てがゼロからのスタートだったが、先生と地域が一体となって新しい学校づくりに取り組み、新設校を軌道に乗せた。教育長として「また、大きな山に挑戦していくことになるだろうな」と言うのは本音だろう。
「いつまでも教え子と関わっていられる」と教師を職業に選んだ。心に留めてきたのは、「子どもたちの置かれた家庭環境はそれぞれで違うから」と、一人一人の子どもに寄り添うことだった。子どもたちは『先生が見てくれている』と心を開くようになり、「子どもたちとの間に信頼関係が生まれていった」と振り返る。
40歳代のとき、学校現場を離れ、教育行政の仕事に携わった。「13年間、教育を俯瞰(ふかん)してみることで、バランス感覚を養うことができた」。大きな転機になった。2015年から、管理職として学校現場に復帰。大規模校2校で、教育行政のキャリアを生かした。
龍王小では、1年生から6年生までの縦割り班をつくるなど、異学年交流に力を注ぎ、子どもたちの社会性を育んでいった。「俯瞰力を養った一つの成果」と目を細める。
東広島市は「教員の指導力に代表されるように教育力の高さでは、他市から一目置かれる自治体」と言い切る。一方で、市内中心部の小学校現場では、児童数の増加による教室不足などの課題が顕在化していることもしっかりと受け止める。
時代の変化とともに、教育も在り方も変わってきていると言い、「現在地に満足することなく、常に高い場所を目指していきたい」と気構えを語る。
性格を尋ねると、「石橋をたたいて渡るような、慎重なタイプ。謙虚さも持ち合わせている」と自己分析。「亀のように、一歩ずつ前に進めていくのが、私の持ち味であり強みかな(笑)」