今年6月に放送された経済報道番組で、米半導体大手のマイクロンテクノロジーが、マイクロンメモリジャパン広島工場(東広島市吉川工業団地)で先端半導体メモリー「1β」の生産を開始すると伝えられた。同社は、今後10年間で、世界の拠点に1500億㌦(約20兆円)投資する計画を明らかにしている。
振り返ると、今から約40年前、1980年代、私が広島県の企画・商工部門の長であったとき、わが国の高度経済成長は終わり、本県経済も従来の自動車、造船、鉄鋼などの重工業中心の産業構造を多角化し、高度化する必要に迫られた。
そこで「県勢活性化のための推進方策」を作成し、県内各地に工業団地を造成し、企業誘致を強力に推進した。特に東広島地域は、先進産業地域として広島中央テクノポリスの指定を受け、「吉川工業団地」を造成して、電子産業の誘致に努め、当時、半導体の中核企業であった日本電気(NEC)の立地に成功したのである。
その際、同社の副社長(のちに会長)であった大内淳義氏を現地に案内したとき、「これまで鉄が産業のコメであったが、これからは半導体が産業のコメとなり、急速に発展するよ」と自信を持って言われ、立地面積を拡大されたことを覚えている。その後、1988年に広島日本電気が設立されたのである。
当時、日本の半導体産業は、世界の過半のシェアを占めていたが、その後、アメリカとの半導体摩擦などにより、大幅に低下し、現在は、約1割にとどまっている。広島日本電気もその影響を受け、その後、エルピーダメモリとなり、2013年に米国のマイクロンに買収され、今日に至っている。経営形態は変わったが幸い、事業基盤は引き継がれ、現在、従業員数3700人、直近3年間の投資額は70億㌦(約9500億円)に上る。
最近、世界的な半導体の不足によって、自動車やエアコン、スマホなど私たちに身近な製品の生産にも支障を来し、半導体の重要性が再認識されている。今や、半導体は、産業のコメの時代を過ぎ、現代文明のエンジンとも呼ばれ、国家にとっても、経済安全保障上の主要な戦略物資となっている。従って、経産省でも、新たに2021年度から国内の半導体生産施設の整備に対し、助成金を交付する制度を設けている。
地元としても、行政をはじめ、経済界、大学、地域が一体となって環境整備に努め、最先端の半導体生産基地・東広島に発展することを期待したい。