国土交通省の本年度の水資源功績者表彰に東広島市の「アクアフェスタin福富」実行委員会が選ばれた。同表彰を受けるのは広島県からは19年ぶり。委員会は福富ダムの建設をきっかけに「水はいのち」をテーマとしたイベントを開催。22年にわたって水資源の大切さを伝えてきた。その活動にスポットを当てた。
目次
福富町は、沼田川の源流地があるほか、福富ダムの水が愛媛県の島々にも送水されているなど、水に関する重要な地域。この水資源の大切さを伝え、さらにまちおこしにつなげようと2000年、地域住民らで実行委員会を立ち上げアクアフェスタを初開催した。
フェスタは例年10月上旬に開催。水の飲み比べなど親しみやすい催しに加え、送水先の愛媛県上島町(合併前は岩城村、弓削町、生名村)の物産販売やパネル展示も実施している。こういった上下流交流によって、流域の一体的な発展を目指した活動などが今回、評価された。
活動の輪も広がっている。実行委員会は、環境、観光、文化・芸術、福祉など46団体で構成。大学生も加わって幅広い年代で運営している。フェスタ来場者は最多で2万3000人。広島市や呉市、福山市など周辺市町からの来場も増えており、人口減のまちににぎわいを創出している。
また、水をつくる山や森を守るための植林事業も継続して行っている。連携するグループの一つ「すいすい倶楽部」と共に、22年間で約2000本を植栽した。
フェスタはコロナ禍の影響でおととしから中止・縮小してきたが、今年は10月1~2日、感染対策を講じながらも通常の開催を計画している。場所は道の駅湖畔の里福富。実行委員会は「グルメやステージを楽しみながら、自然の豊かさや水の大切さを感じてもらいたい」と呼び掛けている。
アクアフェスタin福富実行委員会
会長 渡井 修さん
アクアフェスタは、先人たちや地域の皆さんで作り上げてきたもの。先輩たちや福富のまちづくりに携わる皆さん全員と喜びを分かち合いたいです。活動を継続していくことが今後の課題。今回の表彰を励みに、若い世代とも積極的に協力しながら、源流の町として水資源の大切さを後世に伝えていきたいと思っています。
アクアフェスタとは
豊かな水資源と自然を根幹とするまちづくりの一つとして、2000年から開催。「水はいのち」をテーマに、アイガモレースや沼田川の小さな水族館、ウオーターバーなど、親しみやすい催しを通して、水資源への関心を高めている。今年のアクアフェスタの情報は公式ホームページで随時更新される。
福富の水資源の「え、そうなんだ!」
全長50km余りの二級河川沼田川 始まりの小さな湧水が福富にある
沼田川の上流地域と下流地域の交流や、水源のまちの活性化を目指す「すいすい倶楽部」が4年間にもわたる調査の末、2004年9月、福富町上竹仁の金明山中腹、北緯34度31分24秒東経132度41分21秒を沼田川源流地点(写真左、提供写真)と定めた。
福富ダムに蓄えられた豊富な水は愛媛県の島々に送水されている
福富ダム(写真下)に蓄えられた豊富な水は、三原市で取水・浄水されて、海底送水管を通って県境を越え、愛媛県の上島諸島にまで届けられている。水道用水の確保が難しい島にとってなくてはならない存在で、上島町では「友愛の水」と呼ばれている。
ダムの底にひそかに眠る2頭の龍神
ダムの建設時に仮の排水路として作られたトンネルのうち、上流側は貯水のためにふさがれたが、下流側100mは現在も空洞のまま。そのトンネルの両側壁面には、「虚空蔵の水岩伝説」と「鰐淵の滝伝説」に登場する龍(写真左、提供写真)が描かれている。
文 小林祐衣
ザ・ウイークリー・プレスネット2022年9月8日号掲載