定数4に対し6人が立候補した県議選・東広島市選挙区は男性現職3人と男性新人1人が当選、新人の女性2人が落選する結果に終わった。一方、定数30に過去最多となる40人が立候補した東広島市議選は、新人10人が当選、現職4人が落選、世代交代が進んだ。また、女性は改選前の5人から8人に増え、市議会に多様性をもたらしそうだ。2つの選挙を本紙編集委員の吉田実篤と日川剛伸が総括した。
【県議選】選挙の難しさを示唆
吉田 県議選の結果をどう分析する。
日川 結果だけをみると予想されていた通りだが、得票数で分析すると驚きが2つあった。恵飛須圭二さんの数字が伸びなかったことと、準備不足が懸念された入江寿美代さんが票を伸ばしたことだ。
吉田 恵飛須さんは県議会最大会派に所属。思いを予算に反映しやすい立場で活動、実績も残したと思うが、その評価はなかったのか。
日川 恵飛須さん陣営では当初、1万1500票から1万2000票の獲得を計算していた。無所属で出た前回選挙では9500票だったが、今回は自民党公認と公明党推薦を得ての出馬。プラス要因が多かったからだ。私自身、取材を通して、実績を評価する声を多く聞いていたから伸び悩んだのは意外だった。
吉田 実績が必ずしも票に結びつかない、という、選挙の難しさが出た。入江さんの票が伸びた要因は。
日川 大きな要因は女性の支持。弊社の出口調査で、女性の約4割が入江さんに票を入れていた。公約も他の候補者と違って女性支援の1点に絞っていて、分かりやすいという声も聞いた。
吉田 男性候補者は、みんな当選が間違いなさそうだから、女性の入江さんに入れよう、という人もいたと聞く。入江さんの票は、ふたを開けてみないと分からない、という選挙の怖さが出た数字ともいえる。他の当選した3人は。
日川 出口調査をみると、井原修さんは、きちんと意思表示できる政治家であるところが評価されていた。西本博之さんは労組関係の組織票に地域の保守票を上乗せした印象。山下守さんの票が伸び悩んだのは、地域が競合する入江さんに票を食われたのが要因。ともあれ、4人の4年間の仕事は注視していく。
【市議選】「浮動票」若い候補者に
吉田 市議選の投票率は補選を除き過去最低の41・12%に終わった。
日川 有権者からみれば、過去最多の40人が立候補し、選ぶ選択肢は増えた。ただ、立候補者の増加が、投票率を上げるうねりにはならなかった。立候補者の多くが口にしていた「静かな選挙」という印象が数字に出た印象だ。
吉田 一般的には低投票率は現職有利といわれるが、40歳以下の新人は全員が当選を果たした。その大きな要因は。
日川 普段、投票に行く人の中で、誰に投票するか決めていない人たちの「浮動票」が若い候補者に流れたと思われる。その象徴が、東広島市議選史上最多の得票となった鍋島勢理さんだった。候補者の中で最年少だったことや、女性であること、外国の大学院修了というキャリアなどが有権者を引き付けたようだ。
吉田 その鍋島さんが地盤とする高屋町では、女性5人を含む9人が立候補。市議選の大きな震源地になった。高屋町の結果をどう見る。
日川 鍋島さんと同様に、強い印象を持ったのが女性の木村輝江さんが5位当選を果たしたこと。「子育ての経験を生かす」をフレーズにして、確固たる地盤を持たなくても、多くの票を集めた。県議選で高屋町から出馬し、次点に終わったが多くの票を集めた入江さんの戦いの流れが続いていた印象だ。
吉田 11人が立候補した女性は鍋島さん、木村さんを含め8人が当選。40歳以下の当選と合わせ世代交代が進んだようだ。一方で当選した現職の多くは、前回選挙よりも得票を減らしていた。
日川 まさに「新しい風」に票を奪われた格好となった。選挙期間中、有権者からは『そろそろ若い世代に譲ってもいいだろう』と、世代交代を望む声をよく聞いたが、その一端が垣間見えた選挙だった。
吉田 落選したのは新人4人、元職2人、現職4人だった。当落を分けた要因は。
日川 新人の候補者は、地盤とする地域の盛り上がりがいまひとつだったり、準備不足だったりしたことなどが敗因。現職の男性候補者の敗因は明らかに「平生往生」。現職女性は2期目のジンクスに沈んだ。女性候補の中の一人として埋没したことも響いた。
吉田 今回の選挙ではSNSを駆使して戦った候補者も多かったが、それがどう投票に結び付いたかは、まだまだ未知数のところもある。新議員にはどんどん公約を市民に発信してほしいが、SNSをツールとして生かしながらも、市民の顔が見えるアナログの長所、利点も忘れないでほしい。
日川 今後の争点は議長選と会派構成になるが、議長を選ぶためだけの会派再編は避けてもらいたい。本来の政策集団であるための会派構成であってもらいたい。