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高大連携取り組み実る 高校時代の研究成果 学術誌で発表 広島大理学部4年生 中西健介さん

  • 2023/06/03
田澤助教(左)の指導で研究をする中西さん(撮影・日川)
田澤助教(左)の指導で研究をする中西さん(撮影・日川)

 広島大学理学部生物科学科4年生の中西健介さんが、高校時代の研究成果を日本発生生物学会の公式学術雑誌「Development,Growth&Differentiation」の2023年2月号に発表した。同雑誌に高校生の研究成果が掲載されるのは珍しいという。

 中西さんは、近畿大附属広島高校東広島校時代、自然科学部に所属。カエル類の透明骨格標本を作製しながら、標本を観察していた。その際に、吸盤を持ったカエルの指先の第一関節にあったintercalary element(以下IE)と呼ばれる骨格の存在に気付き、科学に興味を持った高校生を育成する広島大のグローバルサイエンスキャンパス(GSC)広島に参加、この骨に関する研究を始めた。

 GSC広島では、広島大両生類研究センターの田澤一朗助教の指導の下で、木に登る樹上性のニホンアマガエルとシュレーゲルアオガエルを用いて、組織切片での観察を加えた。組織を切り取って顕微鏡で観察すると、透明骨格標本では、シュレーゲルアオガエルにしか見られなかったIEがニホンアマガエルにも見られることが分かった。

 ニホンアマガエルはアマガエル類、シュレーゲルアオガエルはアカガエル類と、2種は系統的に離れていたことから、IEの進化的起源に興味を抱いた。これまでIEの発生過程を比較した研究はなく、2種を透明骨格標本と組織切片を用いて骨学的・組織学的に比較、その発生過程が似ていることを明らかにした。さらに、二つの系統に見られるIEが両系統の共通祖先で獲得された組織に由来することも示唆。同雑誌に発表した。

 中西さんは、大学でも「IEの研究を続けたい」と、田澤助教が所属する研究室で研さんを積んでいる。現在は、アマガエル類とアカガエル類で、IEを持たないとされる、吸盤のないカエルまで対象を広げ、組織切片を用いて、第一関節の発生過程を観察している。大学院進学後は、遺伝子レベルで、IEの遺伝的基盤や発生メカニズムを明らかにしていくことが目標だ。

 「論文が掲載されたことは大きな励みになる。研究が実を結んだのはGSCに参加できたからこそ。高校時代に面白い事象に出合えたことが、研究を続ける動機付けになっている。これからも頑張りたい」と中西さん。

 田澤助教は「中西君の良いところは研究能力の基本スペックが高いこと。仮説も自分で考え立てていく。研さんを積み、今の研究を自分の名刺のようなものにしてほしい」と話している。

(日川)

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