広島県内の飲食業関連3団体(広島県料理業生活衛生同業組合、広島県日本調理技能士会、全日本司厨士協会中国地方本部広島県本部東広島備北支部)は10月16日、東広島市重要文化財の旧石井家住宅(西条町下見)の活用を考える勉強会(川口伸二代表世話人)を同住宅と、隣接する飲食店の和菜亭次郎丸で実施した。(髙橋)
勉強会には、新谷正義衆院議員、旧石井家住宅の移築復元に尽力した広島大学の三浦正幸名誉教授、東広島市議会の奥谷求議長、市産業部の鈴木嘉一郎部長、市教委文化課の石井隆博氏など約30人が出席。観光庁観光資源課の遠藤翼氏、文化庁文化資源活用課の春田鳩麿氏もリモートで参加した。
三浦名誉教授は「放っておくと費用が掛かるばかり。活用することで市の財政負担を軽くし、多くの人に文化財の価値を知ってもらえる」と説明。参加者は旧石井家住宅の文化財としての保存と、歴史的資源を活用したまちづくり、観光産業振興などについて意見交換した。文化財の活用は、文化財自体の知名度向上に加え、観光客の増加、地域の知名度向上、地域への経済波及効果などが期待されている。
参加者のコメント
観光庁観光地域振興部 観光資源課 文化・歴史資源活用推進室室長 遠藤 翼氏
観光庁としても観光立国推進基本計画を策定して取り組んでいるさなか。持続可能な形での収益事業をいかに作っていくかが重要だ。
文化庁文化資源活用課 課長補佐 春田 鳩麿氏
文化財を個人のものという事だけではなく、地域の共有財産としてしっかりと継承していく意識が芽生えるよう、協議をしながら進めていただければと思う。
衆議院議員 新谷 正義氏
西条は江戸時代から酒蔵が続いてきており、それに付随して歴史的な価値のある建物も残っている。地域の皆さんもその価値を認識して、さらに活用して行くことが重要。事例をしっかり勉強したい。
広島大学名誉教授 三浦正幸氏
旧石井家は西国街道の中でも重要な宿場町であった西条四日市にあった町家で、この建物はその中でも西条随一の名建築。相続の際に取り壊しの危機にあったが、東広島市の理解をいただき、この地に移築することができた。
文化財は閉め切ってしまうことが多いが、木造建築に関しては閉め切ってしまうと空気がよどんで、木材を腐らせてしまう。できるだけ多くの人が出入りすることが文化財保護になり、未来に残すことになる。
東広島市議会議長 奥谷 求氏
議会としても東広島市の活性化の一つにつながるのではないかと思っている。市議会としても関係法令をしっかり守りながら、推進する立場で頑張っていく。
「旧石井家住宅」とは
旧石井家住宅は、元・西条四日市の西国街道沿いにあった江戸時代の町屋です。
江戸時代には酒造業を営んでいたと伝えられており、幕末には旅籠(はたご)、明治4年以降は薬店となっていました。
規模の大きな町屋で、通り土間に沿って八畳間を2列3室(計6室)に並べ、入り口には土間を挟んで六畳ほどのコミセと呼ばれる小部屋を設けています。
立面は妻入り入母屋造(いりもやづくり)の二階両側の屋根に錣(しころ)状に庇(ひさし)を接続し、屋根の形が甲冑(かっちゅう)の兜(かぶと)に似ているところから、俗に兜造りと呼ばれています。
現在ではこのような形式の建物は竹原市に小規模なものがあるだけで、全て取り壊されているため、旧石井家住宅は西条四日市の町並みを代表する町家で、学術的にも、当地方の建築文化の伝承のためにも重要な建築物として、平成5年に東広島市重要文化財に指定され、平成9年、西条町下見の現在地に移築、復元されました。