無駄をそぎ落とす開発と営業に特化し経営
5月で創業100年を迎える作業靴専門メーカーのノサックス(本社・東広島市田口研究団地)。創業以来「すべての現場に、快適な安全靴を」との思いで働く人たちのために、靴を提供してきた。近年は、世界基準の安全性を視野に入れた商品開発に力を注ぐ。野口隆志専務に、安全靴の開発に込めた思いや、これからの事業展開などについて話を聞いた。(日川剛伸)
今年が創業100年目です
第一次世界大戦が始まった年に創業し、安全靴の原型といえる、草履の裏側に切れ目を入れて板を張り付けた板裏草履という履物を作りました。戦後は、高度経済成長とともに、日本でも安全靴の需要が高まり、1950年代から革製の安全靴の製造を開始しました。65年には、安全靴の黎明期から存在した会社として、大手のミドリ安全様たちと一緒に、日本安全靴工業会の設立にも尽力しました。
これまで、90種近くの商品を開発してきましたが、半数以上は、アスファルト塗装や溶鉱炉など高熱作業の現場で使用する特殊な安全靴です。ニッチな世界でトップに君臨したいという強い思いから、特殊な安全靴に特化して商品を開発しています。現場で働く人の声を大切にしながら、それぞれのニーズに合った安全靴の提供に努めています。
世界基準の安全靴を掲げています
世界基準の安全性のものさしであるISO規格は、日本のものさしであるJIS(ジス)規格の3倍です。欧米や中国では世界基準の安全靴を作っており、安全靴メーカーとして日本の安全靴の安全性のレベルを上げていきたい、と思ったのが、10年前、世界基準に目を向けるきっかけになりました。
現在、20種類の国際基準の安全靴を開発し、自動車メーカーのトヨタと、そのグループ企業に納品しています。春からは、トラックメーカーのいすゞ自動車に納品が決まり、もっと自動車メーカーを中心に販路を広げていくつもりです。今の自動車は昔に比べると、サイズが大きく、重たくなっています。当然、働く人の足への衝撃は強くなっており、働く人の足を世界基準で守っていくのは、安全靴メーカーの使命です。日本の安全基準を変えていくパイオニア的な存在にと思っています。
7年前には、他社と製造ラインを共有されました
日本では、今後、少子化の影響でマーケットが縮小していきます。会社同士のつぶし合いは、結果として一社ごとの売上高を落とし、業界のためにもなりません。力を合わせることで、生産量が上がって、取引先との価格交渉にも生かせます。生産量が増えることは、製品の品質を維持することにもつながります。そんな思いで、弊社から他社に協力を求めました。
製造部門を他社とシェアできるようになったことで、商品開発と営業、物流に特化して経営ができるようになりました。余分なものをそぎ落としたことで収益性は高まりました。
これからの思いは
来年が101年目ですが、社名を創業当初の野口ゴムに戻そうと思っています。ねらいは二つあり、一つは原点に返って「働く人の安全を守る」という思いに、より注視することです。もう一つは、将来的には世界進出を掲げており、海外の人に、一目で日本の会社と分かるようにしたいからです。
東広島市に本社のある会社として、マイクロン広島工場や関連企業で働く人たちに、クリーンルームでの半導体製造に適した特殊な安全靴を開発し、東広島のために貢献したいという思いも持っています。
企業情報
株式会社ノサックス
〒739-0038 東広島市田口研究団地6-40
TEL:082-425-3241
営業時間 / 8:30~17:30
定休日:土・日曜日