M&Aで技術力・開発力を発揮、販売を強化
「目指していなければたどりつけない」
転倒予防靴下など介護・医療用品製造の㈱コーポレーションパールスターは令和6年4月、医療法人好縁会グループ会社の株式会社ウェルケア(代表取締役 濱崎敏宏)の完全子会社となった。M&Aによって後継者問題を解決、これまでと同様に事業を継続する。現在は相談役として商品開発に取り組む新宅光男さんに、今回のM&Aに対する思いを聞いた。(梶津利江)
M&Aを考えたきっかけは?
研究者として実績を積む息子(現在:京都大学医生物研究所教授)にこの事業を継ぐ意思がないことが分かり、「もう後がない」というのがきっかけです。また、コロナ禍に主な営業先である医療機関への営業活動ができず、私たちの開発力を知っていただく展示会も開催されることがなく、次第に業績が落ちていきました。
事業承継の道を探す中で、「M&Aの対象になってこそ、将来がある」と感じていました。
M&Aの対象になることを目指すとは?
製造業の強みは、技術力、開発力です。転倒予防靴下は、足先を上げる靴下で転倒を予防する、装具機能をもった日用品です。日々使うものに装具機能を持たせたことがポイントです。日用品だからこそ気負うことなく、在宅でのリハビリも可能です。国が掲げる健康寿命の延伸という視点も意識したものです。こうした開発力や独自の視点が強み。M&Aでもこれらが評価されたのだと思います。M&Aは、私たちの強みを改めて感じ、事業を残す必要性を実感する機会にもなりました。
ただ、販売力には課題がありました。その点、ウェルケアは介護施設を運営し、私たちの事業と親和性が高く相乗効果が期待できると感じました。
また、ウェルケアは海外での事業展開にも高い関心を持っています。東南アジアで高齢化が進み、介護先進国である日本の技術には大きな可能性があります。世界に目を向けた前向きな姿勢を持っていたことも魅力的でした。実際、韓国の医療機器販売会社とは当社の正規販売会社として本年3月に契約、台湾では介護用品を販売する会社と商談が進んでいます。
これから開発したい商品は?
日用品で装具機能を有した商品の更なる深掘りを行いたいと考えています。「そんなことは無理だ」と言われるようなことでも、「何かできるはず!」と思いたいのです。
例えば、極細繊維で摩擦力の高いテイジンナノフロントの特性をいかして、褥瘡対策用クッションを商品化しました。障害児が座位をとれるようになり、よく眠るようになったそうです。介護されるご家族の負担も減ったという声をいただきました。こうした言葉が次なる開発のエネルギーです。
コロナ禍を経て、後継者不在をはじめさまざまな経営課題に直面している企業が多いと思われます。M&A当事者としてアドバイスを。
M&Aによって事業を継承でき、全従業員の雇用を確保できました。私は今まで学んできた専門知識をいかしての相談役につき、商品開発に注力できます。販路拡大の可能性も実感しています。M&Aはひらめきや思いにチャレンジする道を広げてくれました。
M&Aはタイミングも重要です。コロナ禍が明け業績が回復してきた状態でしたので、企業価値をより評価してもらえました。M&Aを進めたというよりも、進む流れに逆らわなかったという印象です。とんとん拍子で実現しました。ただ、M&Aの対象となる企業を目指していなければ、現在のような条件で、このスピードで実現できなかったとは思います。
後継者が育てられなかった無念はありますが、M&Aで家族の縁も繋ぐこともできました。本当によい事業承継となりました。この良さを広めていきたいですね。
企業情報
医療法人好縁会グループ 株式会社コーポレーションパールスター
〒739-2402 広島県東広島市安芸津町三津4424
TEL:0846-45-0116 / FAX:0846-45-0150