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ものづくり企業の人材獲得戦略 マイクロテクノ株式会社 山縣麗香人事総務チーム主任に聞く

  • 2024/09/26
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事業への思いを語る山縣麗香主任(提供写真)

 少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少、さらに学生の理系離れなどに伴い、ものづくり企業にとっては、優秀な人材の確保は喫緊の課題になっている。こうした状況下で、精密加工を軸にした自動車部品製造業のマイクロテクノ(株)(本社・東広島市高屋町郷)は人材確保に向けてどのような取り組みを行っているのか。山縣麗香人事総務チーム主任に現状や課題を踏まえて話を聞いた。(田坂英雄)

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汎用機の連結で自動化したライン(提供写真)
メルマガマイクロテクノ_ロータリー
機密性保持のためのアペックスシールとコーナーシール製造(提供写真)

― 直面している人材獲得競争の現状は?人材確保に向け直面している課題をどう認識されていますか。

 地方にある私たちのような中小企業は、大都市圏の企業との競争にさらされ、学生へのアピールに苦労しています。地方では、都市部に比べて工学系人材が不足しています。近年、理系科目を敬遠する学生が増加しており、工学系人材の育成が難しくなっています。特に、女子学生の理系進学率が低いことは、深刻な問題です。
 待遇面では、他業種と比較して、製造業の給与水準が低い傾向にあることに加えて、中小企業では、大企業との賃金格差が大きく、優秀な人材の獲得を難しくしています。また、効率化のため夜勤があることや、長時間労働や休日出勤が多いイメージも、人材獲得の障壁となっています。
 一方で、製造業は「きつい、汚い、危険」といった3Kのイメージが根強く残っており、若者にとっては、製造業が魅力的な職場と思われていない場合があります。技術革新や脱炭素社会への対応など、企業の将来展望が見えにくいことも、人材獲得を難しくしています。近年は働き方改革への意識が高まり、ワークライフバランスを重視する学生が増えていることも、人材獲得を難しくしている要因の一つです。

― その課題を解決するためには、どのような取り組みが必要だと。

 地方の人材定着を促進するためには、まちづくりともかかわりますが、地方の魅力向上や生活環境整備などに力を入れる必要があります。そのうえでUターンやIターンを促していくことです。
 外国人人材の受け入れも、人材不足を補う有効な手段でしょう。そのためには、環境整備や日本語教育支援など、外国人材の活用を促進する取り組みが必要です。
 待遇面では、働き方の見直しを含めて、給与水準の向上や長時間労働の是正など魅力的な職場環境を整備する必要があります。
 企業イメージの向上のため、技術革新やSDGsへの貢献など、企業の積極的な取り組みを発信し、若者にとって魅力的な職場であることをアピールする必要があります。

― 働き方改革については、どのような取り組みをされていますか。

 残業時間の削減をするために、設備投資をして自動化したり、有給休暇取得促進日を年に2回設けたりしています。ほかには、2007年から小学校就学までの子を養育する場合は短時間勤務を認めたり、コアタイムなしのフレックスタイム制度など柔軟な働き方を許容する制度も積極的に取り入れたりしています。また、社員のスキルアップを支援するための研修制度や資格取得支援制度も充実させています。

― 優秀な人材の獲得のために、どのような施策を。

 企業は、将来を担う若手人材の確保が喫緊の課題です。検討中なのが、奨学金返済支援制度(企業が採用した新入社員の奨学金債務の一部または全部を、企業が代わりに返済する制度)です。この制度を通じて、学生の経済的不安を取り除き、入社を促す狙いと、離職防止の狙いがあります。企業にとっては、優秀な人材の確保や定着率向上、企業イメージ向上などの効果が期待できます。学生の経済的負担を軽減し、優秀な人材を確保するための有効な手段だと考えています。特に、私たちのような中小企業にとっては、大企業との差別化を図り、学生へのアピールポイントを増やすことができるでしょう。

― 広島県では、奨学金返済支援制度を導入する企業への助成金制度があります。

 広島県の奨学金返済支援制度への助成金は、制度導入を検討する企業にとって大きな後押しになります。導入コストの負担を軽減できるだけでなく、行政の支援を受けることで、企業の社会的責任を果たす姿勢をアピールすることもできます。

― 最後に、人材戦略を中心に、今後の事業展開について。

 優秀な人材の確保に始まり、中長期的には、人への投資の強化、スキリング支援として、デジタルスキルやグリーン技術など、成長分野で必要とされるスキルを習得できるように支援します。また、企業と教育機関が連携し、実践的なスキルを習得できる教育プログラムを開発・提供する必要があると思います。この点では、積極的に関与していきたいと思っています。働く環境の向上も継続的に取り組み、働き方改革や福利厚生制度の充実など、さまざまな施策を通じて、社員が安心して働ける環境づくりに努めていきたいと考えています。そして、地域社会に貢献できるものづくり企業として、持続的な成長を目指していきます。


企業情報

マイクロテクノ株式会社

〒739-2124 広島県東広島市高屋町郷676番地
TEL:082-434-1155
FAX:082-434-1164

マイクロテクノ社は、東広島市高屋町に本社を置く、精密金属加工を主力とするものづくり企業(従業員200人未満)、自動車部品のエンジン部品や、トランスミッション内の油圧制御用部品で高い技術力を誇っている。ベトナムに海外製造拠点あり。

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プレスネット編集部

広島県東広島市に密着した情報を発信するフリーペーパー「ザ・ウィークリープレスネット」の編集部。

東広島の行事やイベント、グルメなどジャンルを問わず取材し、週刊で情報を届ける。

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