「気」を込め、常に新しい技術に挑戦
1977年の創業以来、金型の製作に一貫して取り組んできた。金型は部品を製造するための金属で作った器の総称で、金型で成形をすることで、同品質のモノを安定して得ることができる。いわばモノづくりの土台だ。岩本孝社長に、金型を作る思いや、社員教育、夢などについて聞いた。(日川剛伸)
― 金型を作る上で心掛けていることは。
「魂」を込めて作っていることです。自動車や機械・設備などの部品は少量〜大量生産ですが、私たちが作っているのは、「一品物の金型」です。量産する部品とは異なり、部品を作るための金型(道具)は一つでよいわけですから、お客さまの要望に沿った金型を作れるよう試行錯誤の連続です。お客さまが求める品質を一品ずつ実現しながら納期に収めていく―。これには相応の技術が必要で、「気」が入っていなければ、お客さまが求めるような金型はできません。
これまで、自動車部品の金型を中心に、設備の骨組み製品など1000種を超えるモノを作ってきました。
― 金型を作る難しさは何ですか。
自動車業界では、開発競争が激しく、金型の製作にも絶えず進化が求められることです。例えば、一つの部品をつくるのに、5~6工程かかっていたものを、3工程に削減できる金型を作ってほしいとか。新しい技術を取り入れていかないと、取り残されるため、製品開発の挑戦を止めることはできません。
半面、挑戦できることは仕事のだいご味でもあります。作った金型が、期待通りの性能を果たしてラインが動き出すときの喜びや達成感は、モノづくりに携わった人でないと味わえません。
― ターニングポイントになった出来事は。
2007年、本社工場を、東広島のほぼ中央に位置する中核工業団地内の広い敷地に移転したことです。移転は大きな設備機の導入を可能にしましたし、市内全域から人材を集めやすくなりました。
2008年、リーマン・ショックが起きましたが、設備を更新・増設したことで、サイズの大きな金型の受注を確保。そのことに伴って社員も増やし、仕事の効率も高まり、リーマン・ショックを乗り越えることができました。
― 次期、米国のトランプ大統領は、関税の引き上げの意向を示しています。
金型を作る側では大きな影響はないでしょう。影響が出るとすれば、開発する車形が凝縮されて、納品する金型の種類が少なくなるのかな、と。対抗策としては、金型で培ってきたモノを作る技術を、金型以外の部品加工などの分野に生かしたい、と思っています。
― 社員に訓示していることは。
特にはありません。ただ、目線を社員に合わせて、社員と対等な立場で話をするように心掛けています。やらされて仕事をするのではなく、自主性を持った社員になってほしいからです。自主性を持っていると、何かにつまずいても、立ち直ることができます。社員には、自主性を高めてもらうために、何かを発信しチャレンジしてもらう人になってほしいと願っています。
社員に迷いが生じたときに、社員の背中をぐっと押してあげることができる―。私が思い描く理想の社長像です。
― 10年後の会社をどう描かれていますか。
10年後も今と同じ状態の会社であること。つまり会社の存続が一番です。私は「成功する人は方法を探し、成功しない人は理由を探す」という言葉が大好きです。そのマインドを心のよりどころにしながら、社員一人一人が、自分の存在価値を確認し、輝いている会社にと、思っています。
企業情報
〒739-2117 東広島市高屋台2丁目1番22号
TEL:082-491-0588
1977年、岩本鉄工として創業。95年、八本松工業団地内に移転。97年、イワモトに社名変更。2004年、九州工場新設。07年、東広島中核工業団地内に本社工場移転。08年、500TONメカプレス導入。主な取引先は東プレ、ワイテック、千代田工業など。
岩本孝さんプロフィル
1977年、東広島市志和町出身。近畿大学附属福山高卒。三重県四日市大卒業後、2001年、ナガラ(名古屋市)入社。06年、ナガラを退職し父親の興したイワモトに入社。23年、社長に就任。