2023年3月から運用を開始したTGOアプリ。東広島市が進める「Town&Gown(タウン・アンド・ガウン)構想」の柱の一つで、広島大学生のサポートツールだ。2月20日号の「ザ・プレス」で提言した韓国出身で山口大に学ぶ留学生、イ ドンウさんの取材メモをもとに、関係者の声をまとめた。
市議の声
A氏
●東広島市が推進するTGOアプリは、将来的なスマートシティ構想の一環として期待されているものの、現時点では多くの課題を抱えている。市議会での理解不足。デジタル分野に詳しい議員が少なく、アプリの目的や役割についての共通認識が不十分。
●TGOアプリは、都市OS(デジタル基盤)としての機能を期待されているが、その運営主体や管理責任について議論が続いている。KPIの設定については、どの指標でアプリの効果を測定するのか、具体的な目標を定めるべき。
●TGOアプリの管理体制を見直し、持続可能な形での運用を目指す必要がある。
B氏
●KPI(重要業績評価指標)が未設定。 成功基準が不明確なため、成果が測定できず、評価が困難。市民の認知度・利用率の低さ。 現状のままでは普及が難しく、利用者の声も十分に集まっていない。
●個人情報の管理は市民データの取り扱いに関するリスクが不明確であり、責任の所在を明確にする必要がある。
●予算を投資する妥当性を精査し、継続・撤退の基準を明確化。もっと市議会の関与を強化すべき。TGOアプリの方法論をより積極的に議論すべきである。
IT企業関係者の声
A氏
現状の課題について
●TGOアプリの開発は、最初から適切なプロセスを踏んでいない。通常、民間なら小規模なWebサービスから始めるのが通常の手順である。その結果、ニーズの確認が不十分なまま進行し、利用者数が伸びない問題が発生している。
●現状では、TGOアプリのままでは成功する可能性が低い。UI/UXの質は悪くないが、そもそも利用されていない。財政的観点から見ても、これ以上の投資は慎重に判断すべき。
今後の選択肢について
●大幅な内容変更と、ニーズに基づいた新機能の追加。
●プロジェクトを撤退する。アプリ開発をやめ、Webサービスとして展開する。
●東広島市内の企業だけで開発することも可能だったが、限界もあった。東京の企業が関わることで、ある程度の規模感は確保できたが、コスト削減の余地はあった。
広大生の声
声をまとめると
●TGOアプリの利用率は非常に低い。一部の学生は「聞いたことがある」と答えても、実際に使っている人はほぼいなかった。入学時に学校から推奨された学生もいたが、現在は使っていなかった。
●UI・UXに対する不満はないが、そもそも利用する場面がない。「不便さを感じない」という意見はあったが、それは「利用機会が少ないため」かもしれない。
●現状の機能に満足している学生はいなかった。良いと感じる点は特になしという回答だった。一方で、売店の在庫確認や予約機能があれば便利という声もあった。
広国大生の声
●広島国際大学に特化された機能があれば使ってみたい。
●SNSとの連携が鍵になる。学生の情報収集手段はインスタグラムやX(旧Twitter)が中心。
●TGOアプリ単体ではなく、既存のSNSと連携することで利用者を増やす戦略が必要。
●広島大学のみで運用されているのは不公平感があり、他大学の学生は関心を持ちにくい。
市民の声
A氏
市民にとって必要な機能が不足している。ユーザー参加型ではなく、一方的な情報発信にとどまっている。市民同士で情報を交換できる機能が求められている。
B氏
追加して欲しい機能は、
•リアルタイム道路情報(災害時や混雑状況)。
•災害時の最新情報(避難所の混雑状況など)。
•市民同士が情報を共有できるコミュニティ機能。
•緊急時に役立つ情報提供(小学校の下校時間後の連絡手段など)。
市民にとって「リアルな情報」が重要。
C氏
既存の「市民ポータル」やLINEグループのように、リアルタイムで使える情報があると利用価値が高まる。
「市民が見たい情報をリアルタイムで提供する仕組み」を作るべき。現状のTGOアプリでは、市民の関心を引くのは難しい。
D氏
今後の展開次第では活用の可能性はあるが、根本的な機能改善が必要。
既存のサービス(市民ポータルなど)と連携し、より実用的な形に進化させるべき。
市の見解(市議会2月定例会・代表質問から)
栗栖真一 経営戦略担当理事
TGOアプリは、広島大の学生や教職員が利用できる環境になっているが、完成品としてのアプリの提供ではない。大学関係者以外の人が活用するためには、アプリに紐づくサービスを充実させなければならない。
今後の開発に関しては、効果検証を踏まえ、段階的に機能を拡充しながら改良を進めるアジャイル開発の手法を取り入れたいと考えている。魅力的なアプリとするため、見直すべきところは見直していく。
開発を担う広島大共創コンソーシアムで合意形成を図りながら、慎重に開発を進めていく。