『あなたの税金が命を救う』
広島県立広島高等学校1年長野由佳
まだ私が幼かった頃、母親が事故に遭い、救急車で運ばれたことがある。保育園に私を迎えに行く途中だったそうだ。幸い大ケガまでには至らなかったのだが、突然の事で訳も分からず泣きじゃくりながら病院で母に再会し、「大丈夫?」と尋ねた時、
「救急車がすぐ来てくれたけんね。大丈夫だよ。」
と笑顔で答えてくれた母を見てホッとしたと同時に幼いながらに救急車のありがたみを感じた。そう、当時の私にとって救急車は〝母を救ってくれたヒーロー〟だったのだ。
今回、税について調べる際に救急車によってかかる経費のすべてが、私たちが日々払っている税金で賄われていることを知った。さらに救急車にかかるお金は年間でなんと二兆円以上、一回だけでも約四万五千円もかかってしまうらしい。救急車のありがたみをさらに知った。では海外ではどうなのだろうか。なんと海外の多くは日本とは異なり、救急車は有料だったのである。それもロサンゼルスでは平均十二万、フランスも約二万五千円と高額料金ばかりである。もし日本の救急車が有料だったら、救急車が呼びたくても十分なお金が払えなかったら。母のケガの状態は悪化していたかもしれない。そう考えた瞬間普段税金を払うことを少しもったいないと思っていた自分が恥ずかしくなった。
他にも税金による日本の医療サービスの具体例として、自営業やフリーランス、無職の人などが加入でき、 医療費の一部が保険でカバーでき、病院の診療費が軽減される国民健康保険や、無料や低額の健康診断や予防接種の提供、地域医療を支える補助金の支給やさらには医療費が一定額を超えた場合に自己負担額が払い戻しされる高額療養費制度などの様々なサービスが提供されている。これにより子どもや大人、富裕層貧困層関係なく、誰もが安心して平等な医療サービスを受けることが可能になるのだ。
話を救急車に戻そう。最近、救急車の費用を税金で賄うのではなく有料化にすべきだという議論が活発化している。実際、救急搬送の4割は軽傷者であったり、中にはいたずら電話などの不適切利用も行われている。だがしかし、私はやっぱり救急車は税金で賄った方が良いと思う。何故なら救急車で助かる命が確かにそこに存在しているからだ。だからこそ、決して無限に湧いてくる訳ではない税金を有効的に使うためにも、まずは自分たちの税金がどのようにして使われているかを「知る」ことが大事ではないのだろうか。