今季の鯉を振り返る
晩秋の冷たい風が吹き抜けていた。ブラリと訪れた昼下がりのマツダスタジアム。半年間に及び熱い戦いが終わって、グラウンドはすっかり静寂を取り戻していた。新幹線と在来線の列車の轟音だけが響き渡っていた。
黒田人気に始まり、黒田効果の一年だった。メジャーリーガー(ヤンキース)が約10億円の年俸を振って、カープに復帰して くれた。マエケンもジョンソンも黒田に負けない活躍だった。観客も球団史上空前の220万人を超す入場者を記録した。
しかし激戦の結果は、皮肉にもCSをかけた143試合目の最終戦(対中日)で敗れ万事休す。この試合、熱投するマエケンが7回無失点で味方打線の援護を待つも、8回継いだ大瀬良が3失点(0対3)。場内にタメ息と罵声が飛び交う。カープファンの24年ぶりの優勝の夢は消え去った。
この試合はまさに、今シーズンを象徴した「投高打低」の試合内容だった。序盤から打線を引っ張ったベテラン新井のヒット1本のみでは勝てる訳もなかった。プレッシャーの中での涙の敗戦投手大瀬良を責めるのは酷だったかも。
7年前、自由契約同然で復帰した今年、新井は拍手と大声援の中で迎えられた。期待を裏切ったのは菊池と丸。菊池は2割5分4厘、丸は自己タイの19本塁打を放ったが打率は2割4分9厘。二人とも昨年の 3割台を大きく下回った。不振は気持ちの焦りを囲ったまま、技術的な迷路を抜け出せなかった。当初選ばれていた「プレミア12」の侍ジャパンのメンバーからも外された。
打線の中核として依存度の高い外国人選手はどうだったか。エルドレッド、シアーホルツは故障などで戦列を離れる事が多く、大きな誤算となった。一方では田中、鈴木誠、野間ら若い戦力も将来への楽しみを持たせた。
マウンド上で孤軍奮闘する先発投手陣。援護できな かった打線。カープ野球の真髄でもあるバント、エンドラン、盗塁などの機動力も生かせなかった。対照的だったのは、最下位候補から優勝したヤクルト。川端、山田は打って走って守ってと近代野球のお手本となる働きを示した。
黒田の加入で、評論家の順位予想は優勝かAクラスだった。チグハグだった投、打のバランスは最後まで修正できなかった。首脳陣には厳しい指摘になるが、選手とコーチを結ぶベンチワークの不足が、来季への大きな課題となろう。
プレスネット2015年11月7日号掲載