気がかりな二人の去就は
このシーズンオフ、プロ野球界で最も注目されるのが、カープの前田と黒田両投手の去就だ。
メジャー挑戦を懇願する前田は、2013年暮れからポスティング(入札)での移籍を申し入れて来た。同期田中将大投手(元楽天)のヤンキース入りでの活躍が、一層気持ちを高揚させた。昨年オフも球団幹部にメジャーへの思いを希望したが、球団はチームの柱として容認しなかった。
前田が正規に国内でのフリーエージェント(FA、自由選択権)を取得するには来シーズンを終えてからで、海外移籍となると再来年度になる。
今季15勝を挙げ、最多勝のタイトルと合わせて「沢村賞」も受賞した。登板日のネット裏は、メジャー数球団のスカウトが陣取っていた。ダルビッシュ、田中に次ぐ、逸材である事には間違いない。あくまでも予想だが、入札となると十数億円の資金が球団に支払われるだろう。
10月7日の最終戦(対中日)では、7回を無失点の力投で降板した。
試合終了後のセレモニーでは、グラウンドで最後の最後まで一人残った前田は、スタンドのファンに向かって、両手を大きく振って別れを惜しむかのようだった。すでに本人の気持ちの中では、心の整理がついているのではと…。もちろん球団に保有権があり、前田の自由にはならない。
今後は本人の意志もくみながら、球団は慰留へ粘り強く話し合いを続けていくことになる。
黒田についても、気掛かりなことがある。シーズンが終わって、報道陣から来季の話を向けられると「いつ最後になってもいいという気持ちで常に100%の力を出しきるつもりでマウンドに上がってきた。来年については未定です。まず疲れを癒やしてから考えたい」と言い残して、長かった単身生活から家族の住むロサンゼルスへ戻って行った。不惑の40歳を迎えた中で、中4日での登板を志願するなど黒田の「勇気」と徹底したプロ意識は、若いチームの生きた教材だった。
もし前田と黒田の〝二枚看板〟が一度に抜けるとしたら、球団もファンもゾッとする。今後2人の去就には、球団も懸命な慰留工作が続けられるだろう。2人の残留を切望するのは、球界もカープファンも同じである。
プレスネット2015年11月14日号掲載