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(SUN)

 特別編 「プロ野球のセ・パ両リーグで 日本一を達成 広岡達朗氏に聞く」

  • 2023/08/09

普段着野球貫き優勝を

 ペナントレースは後半戦がスタートした。広島は前半戦、二桁近い貯金と2位以下に10ゲーム差をつけ、25年ぶりの優勝に向かって独走態勢。かつて広島時代にコーチを務め、その後西武、ヤクルトの監督としてセ・パで制覇、知将といわれた地元出身(呉・三津田高―早稲田大)の広岡達朗氏に聞く。

決め手欠く他球団

 ―ズバリ、このまま広島は突っ走るか。

 球界のためにも広島に優勝してほしい。今の状態だったら優勝できる。安定した力を出すには、変な色気を出さないこと。例えば1点を着実に取りにいく、いわゆる固い日本流の野球をすることだ。併殺の多いエンドランはなるべく避け、まずバントで確実にセカンドまで送る。最小点の重みを知ってほしい。

 ―今季の広島がここまでやると思っていましたか。

 混戦になるとは思っていた。昨年のヤクルトが最下位に近い予想から優勝した。どこにも優勝のチャンスがあった。特に巨人の体たらくぶりが目を引くね。阪神も同じことが言えるが、阪神は選手層が薄く、これまでのフロントの補強にも問題がある。

 ―特に広島のどこがいいと思うか。

  昔からカープは金をかけず、自前で育ててきた。僕らがコーチに呼ばれた時も前オーナー(故・松田耕平氏)から〝あんたの手でチームを変えてほしい〟と頼まれた。山本浩司、衣笠、三村(故人)らを基本から鍛え上げた。今に至ってもそうだろうが、育成の方針は変わらず昔から引き継がれている。オーナーを中心としたフロントワークがいいんだろう。

▲広島コーチ時代。広島の内野・守備コーチとして(左から)衣笠祥雄、山本浩司(現・浩二)らを指導した広岡達朗氏 1970年2月撮影

 ―他球団との違いはその当たり?

 特に巨人は自前で選手を育てることがヘタで、FA選手を獲ってきては頼っていたが、そのつけが回ってきている。監督もコーチも、選手に教えていない。この点は巨人に限らず、今のプロ野球全体の指導者に厳しく忠告してもいい。だからアマチュアから軽視されているんだ。

 ―広島の選手で、個人的に挙げるとすれば。

 野手では有望な選手が目立つ。田中、菊池、丸、鈴木…。内野手はもう少し基本的な面で問題はあるが、体も強いし足も速い。ベンチにもレギュラーとそん色ない子も控えている。いいところはケガに強く、少々悪くても我慢強い。他チームの選手は、特に巨人は年棒ばかり高く、ちょっと悪ければ病院に走って、全治何週間とか言われればすぐに休む。

 ―他球団の甘い体質はどうすれば。

 監督、コーチがそんな選手を使わなければいい。本人に危機感を持たせるんだ。コミッショナーも、じっとしているばかりじゃダメだ。12球団に目を配って動かなくては。

 ―広島が優勝するに当たっての不安材料は。

 これからプレッシャーとの戦いにもなるだろうが、今まで通りの野球をやればいい。広島は断然有利だ。ただ監督はベンチにじっとしているんじゃなくて、ここぞという時はマウンドに行って指示を出したり、気合を入れたり。全般的に今の監督は、表に出たがらない。


ひろおか・たつろう 広島県呉市出身、1932年2月9日生まれ(84歳)。呉三津田高校、早稲田大学を卒業し、現役時代は読売ジャイアンツで活躍。引退後は広島東洋カープ守備コーチ、ヤクルトスワローズヘッドコーチ・監督、西武ライオンズ監督を歴任。監督としては、最下位球団だったヤクルト、長期に渡って低迷していた西武をそれぞれリーグ優勝・日本一へと導いた。1992年野球殿堂入り。現在は野球評論家。


プレスネット2016年7月23日号掲載

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