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(THU)

 第22回 「打席ではクール、選手の結束は宴会でミスター赤ヘル・山本浩二」

  • 2023/08/09

 日本球界に「ミスター」の称号で人気を博した人物が3人いる。第一人者が「ミスタージャイアンツ」長嶋茂雄(現巨人軍名誉監督)、2人目が「ミスタータイガース」掛布雅之(現阪神2軍監督)、そして3人目が今回の交遊録の「ミスター赤ヘル」山本浩二元広島監督だ。

 広島が初優勝した75年のオールスター戦。舞台は甲子園球場。この年から4番に定着した山本浩二は、衣笠と2人そろって2本ずつのホームランを放った。絵に描いたような2人で4ホーマーは、超満員のマンモススタンドを大いに湧かせた。同時に日本列島に「赤ヘル旋風」を巻き起こす起爆剤となった。このアベックホーマーで、後半戦の広島を一気に勢いづかせた。

 その後山本は一流打者として、数々の記録とタイトルを築きあげた。首位打者1回、ホームラン王4回、打点王3回。球界を代表する強打者になった。アスリートとしての身体能力はもちろんのこと、特にピッチャーに対する洞察力、集中力のすべてに優れていた。

 人物、性格としては真面目そのものの優等生。当初リーダーとしては、少々面白みに欠けるところがあった。度々のヒーロー取材で正直エピソードを探すのに苦労した。ある意味では記者泣かせの主砲でもあった。

 闘将・星野仙一(明大)と同期生で大学は違っても(山本は法大)仲が良かった。相反する性格がお互いに気が合ったのかも。中日のエースとして、星野の球質を見抜き、山本はことごとく打ってみせた。「コウジはワシのサインを見破っている?」とマウンドでカッカする星野に、山本は実にクールに打席に立っていた。

 野球を離れると元の仲の良さに戻る。星野は顔に似合わず一滴の酒も飲めなく、山本は酒豪中の酒豪だった。酒が入れば、より朗らかになり、人にマイクを持たせて歌わせるのが上手だった。

 かつて阪急ブレーブスで中軸打者として活躍した加藤英司が、広島に移籍して来た年の、沖縄キャンプの休日。山本は「チャ(加藤の愛称)を囲んで一杯やろう」と選手と報道陣に声をかけ、激励の意味を込めて、懇親会を開いた。浩二が歌い、衣笠は好きなジャズを口ずさんだ。飲めや歌えやのドンチャン騒ぎに、加藤は日焼けした顔をさらに赤らめた。「うれしかった。浩二さんの気持ちがよく分かった。チームが一丸となるというのは、強いリーダーの存在だよ」しみじみと言った。優等生の山本浩二が、時には〝宴会騒ぎ〟などでチーム内(選手間)の結束を図った。 「ミスター赤ヘル」は、91年のリーグ優勝を含めて通算10シーズンの監督を務めた。


プレスネット2016年5月21日号掲載

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