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 第32回 「4度のリーグ優勝と3度の日本一に輝いた古葉竹識氏に聞く」

  • 2023/08/23

優勝で平和大通りパレードの実現を

 優勝へのマジックが点灯して、広島の25年ぶりの悲願達成の日が近づいてきた。今回は昭和50年の球団創立初優勝以来、過去4度のリーグ優勝と3度の日本一に輝いた”名勝”古葉竹識元監督(80歳)=現在、東京国際大学名誉監督=をインタビューした。 (スポーツライター・駒沢悟)

 ―カープの優勝はもう間違いありませんね。

 確信していいと思う。一時期巨人の追撃を心配する声もあったが、あの時期(4・5差)でもカープが圧倒的に有利だとボクは思っていた。決してひいき目ではなくね。でも戦っている選手は何ゲーム離れていても最後まで心配なものでね。前を向いて一戦一戦を集中して戦っていく気持ちが大事だね。今のカープは毎試合超満員のファンが応援してくれて、選手に大きな力を与えてくれている。地元で強いのも、ファンの支えがあってからこそだと思う。

 ―1975年、古葉さんの初優勝の時はどうでした。

 4月28日(甲子園球場)にルーツ監督が引きあげ(退団)、5月に入ってすぐ松田耕平オーナーからボクに監督をやれと命令が下った。正直言ってルーツが残したものは?とよく聞かれたが、ずっと最下位だったし、ボクにはあまり印象がないのよね。あの年は5月、6月とペナントレースが進むにつれて大下、三村、キヌ(衣笠)、コウジ(山本浩)、ジンちゃん(水谷)、ホプキンスと打線が日増しに強力になり、大下を中心に機動力も発揮できるようになった。ピッチャーは外木場、池谷、佐伯と3人の先発でフル回転した。幸いにも巨人が弱く(最下位)、カープは一戦ごとに勝星を増していったのよね。

 ―優勝への手応えを感じ始めたのはいつごろですか。

 オールスター戦(甲子園)でキヌとコウジがそろって2本ずつだったかホームランを打ったとき。あの2人のアベックホーマーが、後半戦のチームを勢いづかせてくれるんじゃないかと(笑)

―今年のカープと戦力的にも似通っていませんか。

 ボクらの初優勝が設立から25年目なら、今年のカープも優勝となると25年ぶりでしょ。チームは走攻守に優れている。打撃力は田中、菊池、丸、エルドレッドに鈴木(誠)や安部らの若手に何といってもベテランの新井の存在が大きい。彼こそファンの大声援に後押しされていると思う。全体的に長打力もある。ピッチャーではジョンソン、野村、福井に黒田。とくに黒田と新井は、若い人たちの教材にもなり、刺激にもなっている。リリーフ陣も終盤大瀬良も復活して、外国人と抑えの中崎の成長もいいよね。

 ―話は飛びますが、初優勝した年は盛大なパレードが印象的でしたよね。

 今でも忘れられないね。平和大通りをパレードしたことね。先代の松田オーナー(耕平氏)に「百メートル道路もきれいに整備されたことだし、ぜひファンとチームが喜びを分かち合いましょうよ」と声を掛けたら、オーナーもさっそく、市と警察に話を通されて実現した。すごかったね。沿道は優勝を待ち望んだファン(約30万人発表)で埋まり、ボクら選手もファンも一緒になって喜んだ。感激と感動でいっぱいだったね。おじいちゃん、おばあちゃんが大泣きして手を振ってくれている姿も目にした。あれから5回も優勝したのにパレードはしていないよね。今年はぜひとも平和大通りでの優勝パレードをやってほしいね。

 ―監督個人としての優勝にまつわる思い出を!

 面白いことがあったのよ。後楽園で優勝を決めた日、あるマスコミから「巨人の長嶋さんと対談してくれませんか?」と。ボクは冗談だと思い本気にしなかった。でも、明日長嶋さんがここの指定場所で待っているというので、本気だなと。そしたら「コバちゃんおめでとう」と長嶋さんから握手を求められた。巨人はこの年最下位のチームで、しかも前日の優勝を決めた試合が巨人戦。何か滑稽だったよね(笑)。長嶋さんとは入団した年が一緒で、37年には、終盤戦にボクが顔面に死球を受けて入院するまで首位打者争いをするなど、縁深い人だった。長嶋さんの人柄だから、あの対談ができたのだと思う。今だったら絶対にありえないことでしょう。そしたら翌年長嶋さん(巨人)が優勝しましたよ(笑)。

 ―広島の優勝決定日にはどうされますか。

 感激するだろうね。今から待ち遠しいけど、さあどうしてるかね。現地に行くのは無理かもしれないが、テレビは絶対見ますよ。また全国の赤ヘルファンも喜んでくれる。OBとしても素晴らしく、誇らしいね。


プレスネット2016年8月26日号掲載

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