優勝の喜び、黒田引退の寂しさ…
チームのために全て尽くし出し切る
「クロさん精神」チームに浸透
広島東洋カープ25年ぶりのリーグ優勝の〝立役者〟として〝史上最年長でMVP〟に輝いた新井貴浩内野手(39)。新春のプレスネットに、引退した黒田博樹投手との秘話や、ホープ鈴木誠也外野手の将来性など熱く語ってくれた。
勝利に対する執念増幅
―2016年は最高のシーズンでしたね。新井選手はどんな感想を持っていますか。
チーム一丸となって、ただがむしゃらに突き進んで、得た結果(優勝)だと思う。これも毎試合超満員になったスタンドのファンの方々の後押しがあったからこそです。
―史上最年長でのMVPだった。
一戦一戦を勝つたびに勝利に対する執念が増幅していった。次に優勝したくて全員が暗黙のうちに、必死に向かっていった。ぼくとしてはその結果がベストナインでありMVP。ご褒美だと思っている。2000本安打も300本塁打も、あくまでも通過点にすぎなかった。MVPについては正直キク(菊池)が取ればいいと思っていた。キクは打ってチームの勝利に貢献しただけではなく、守備力でも勝った試合は多いし、ピンチも救ってくれた。
黒田が勇気づけてくれた
―黒田引退の裏話については…。
チームにとっては大きな存在だった。クロさん(黒田)がアメリカに帰ると決まったときは、正直すごく寂しかった。ぼくがカープに帰るに当たって悩んでいるとき、クロさんの言葉が背中を押してくれた。一回出ていった人間が、あれだけのバッシングを受けた。自分では帰ってはいけない?と迷っていた。そのとき黒田さんからは、「そんなことを気にせず、裸一貫で再出発したら!」と言われた。あの人もメジャーかカープかで悩んでいたのをぼくは知っていた。ぼくが先にカープ復帰を決めて、黒田さんもカープに帰ってくると知ったときはうれしかったね。あの人がいたからぼくも勇気づけられ、何倍もの力を与えてくれた。
―黒田無き後のチームは大丈夫か。
ぼくを含めてみんな2年間一緒にやってきて、クロさんの姿勢は見てきた。アメリカへ行く前も帰って来てからもクロさんの気持ちは全くブレていなかった。犠牲的精神というか、チームのために全てを尽くし出し切る。それが2年間でチームに浸透した。もし選手が、クロさんの精神から大きく道を外れるようなときはちゃんと言ってやるのがぼくの役目。そんな心配はいらないと信じている。
厳しい年、覚悟
―鈴木誠也について一言。
彼は二つの才能を持っている。身体能力と努力。球場にも朝早く来て練習している。取り組み方が他の若い人と違う。気持ち的にも感情(悔しさ)を表に出して、常にクソッという気持ちを持って打席に入る。しんどいことを当たり前のようにやっている。間違いなくカープの主軸になるし、プロ野球を代表する選手になる。
―2017年シーズンの目標は。
2017年が相当苦しいシーズンになることはみんな覚悟している。昨季はノーマークだったが、今季は開幕ヨーイドンで5球団がやり返すという強い気持ちでやってくる。特に力のある3選手をFA補強した巨人(山口、森福両投手に陽岱鋼外野手)や、昨季若手を積極的に起用してその伸びしろがある阪神は要注意。カープはあくまでも挑戦者の気持ちでぶつからないといけない。
―新井選手個人としての目標は。
2年前と気持ちは全く変わらない。数字的な目標設定はない。1月中旬からは例年通り護摩行(鹿児島・最福寺)で誓いを立てたい。今回は堂林と會澤も参加を申し込んできたけど、耐えられるかどうか(笑)
プレスネット2016-2017年年末年始号掲載