昔は化粧水替わりにも使われていた日本酒。米由来の日本酒には100種類以上もの有効成分があり、現在も化粧品によく使われています。日本酒に秘められた美肌効果と、その取り入れ方について、酒類総合研究所(東広島市鏡山)の研究員・伊豆英恵さんに聞きました。(生活取材班)
※飲酒習慣がない方に飲酒を勧めるものではありません。
日本酒に秘められた美肌効果
美肌+保湿、さらに血行促進
日本酒にはさまざまな成分が含まれていますが、その中で美肌効果を発揮しているのが「α―エチルグルコシド」、「有機酸」。化粧品のラベルに「米発酵物」などと表記され、確かめてみると市販の化粧品に含まれていることに気付きます。
期待される主な効果は、肌荒れの抑制。日本酒飲用によって肌の水分量が増加し(保湿)、皮膚温が上昇して長時間継続。血行が促進されることで細胞に栄養分がいきわたり、肌が生き生きとしてきます。この美肌効果は、動物、人の実験によって科学的に確かめられています。
アルコールそのものにリラックス効果があり、日本酒の香りがその効果を増幅。特に吟醸酒には果実のような特有の香りがあり、癒やし効果がますます高まります。好みの香りの日本酒を探してみましょう。
酒総研と修道大学が行った飲酒習慣のある人へのネット調査では、良い飲酒習慣は日々の幸福感や充実感につながることが分かっています。ただし憂さを晴らすようなストレスによる飲酒は、飲酒量と飲酒頻度が増えて問題になりがち。特に、女性は血中アルコール濃度が高くなりやすい、アルコール依存が高い傾向があり注意が必要です。「楽しい場面で、コミュニケーションをとりながら、食事と一緒に」が日本酒を上手に飲むこつ。体も心も生き生きとしてきます。
飲んで、塗って、漬かってよし
美肌効果を丸ごと吸収する「酒風呂」
日本酒を飲むことで、そして塗って、お風呂に漬かってと、飲んでも飲まなくても美肌効果を取り入れることができます。
・「酒風呂」の入り方
ぬるま湯に、コップ2、3杯の日本酒を入れてかき混ぜます。量は好みで。5分も漬かればぽかぽかに。
お酒は安いものでも余ったものでも、何でも大丈夫です。吟醸酒には果実のような特有の香りがあり、リラックス効果を期待できます。本醸造酒ならすっきりとした香りで爽快な気分に。香りには好みがあるので、自分に合う香りを探してみましょう。
こつを抑えてこそ健康に一役
食べながらしゃべりながら楽しく
たくさんの疫学研究によって、適量飲酒は健康効果を促進する「Jカーブ効果」があると言われています。病気の種類で異なりますが、まったくお酒を飲まない人に比べて少し飲む人の方が健康リスクが少ないことを示しています。
・Jカーブ効果グラフ
アルコール摂取と生活習慣病などのリスクについて、下のような形となる疾患で、最も有名なのは虚血性心疾患。他に脳梗塞・2型糖尿病などが知られています。
ただし、飲み過ぎると飲まない人に比べてリスクは高まります。つまり、こつを抑えてこそ、健康にも一役買うことができるのです。
・適量飲酒って?
1日当たりの純アルコール換算では、男性20㌘前後(ビール中瓶1本)、女性10㌘前後。この2倍のアルコール量、1日平均40㌘以上の摂取は「多量飲酒」です。生活習慣病などのリスクが上昇します。女性の場合は、1日当たりの量を男性の半分の10㌘程度に。男性に比べて血中アルコール濃度が高くなりやすく、依存症にもなりやすいなど、特有の飲酒リスクがあるためです。
酒かすに注目
女性に人気の甘酒は2種類
酒かす甘酒は酵母由来の栄養が豊富
20~40代の女性に特に人気を集めているのが甘酒。寒い季節に飲むイメージが強いのですが、俳句では甘酒は夏の季語。日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクトでも、熱中症対策になるとオフィシャルパートナー製品に含まれ、通年楽しめるようになりつつあります。
甘酒には2種類あり、酒かすからとこうじから作るものがあります。こうじ甘酒にはアルコールがありませんが、酒かす甘酒にはアルコールが若干残るため気になる場合は加熱してアルコールを飛ばす必要があります。西条では冬になれば酒かすがスーパーに並ぶ身近な食材です。
酒かすは酵母由来の成分、こうじや酵母が含まれる発酵食品のため、栄養学的にも価値が高いといわれています。これを甘酒で飲用することで、肌のきめが整う美肌効果、目の下のクマの改善などが科学的に報告されています。
しっとり美肌「酒かすパック」
酒かすは自然の恵み。肌に優しく働き掛けます。肌を保湿することで、乾燥によるしわを防ぎます。ただし、敏感肌、アルコールに弱い方は注意を。「板かす」「ばらかす」は形状が違うだけで品質は変わりません。
ザ・ウイークリー・プレスネット2017年9月14日号掲載