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【東広島スポーツ】成果を残した斬新な指導 ダイソー女子駅伝部、武田高野球部の両監督

  • 2020/10/12

 元世羅高陸上部で現ダイソー女子駅伝部の監督の岩本真弥さんと、武田高硬式野球部監督の岡嵜雄介さん。それぞれ、斬新な指導でチームレベルを上げてきた。スポーツの秋。東広島の注目の指導者となった2人に「スポーツの指導」をテーマに意見を交わしてもらった。(聞き手 日川剛伸)

 

 

全国高校駅伝で世羅高を男女計6回の全国優勝に導く

岩本ダイソー駅伝部監督


岩本真弥さん

元世羅高陸上部監督

現ダイソー女子駅伝部監督


プロフィル いわもと・しんや 1965年東広島市生まれ。世羅高、福岡大卒。中学教諭を経て2004年、母校の世羅高に赴任。全国高校駅伝で男子を5回、女子を1回全国制覇に導く。19年春、ダイソー女子駅伝部監督に就任。

 

 

武田高野球部のレベルを上げ、今夏の県大会ではベスト4に導く

武田高スポーツ監督対談
岡嵜雄介さん

武田高校野球部監督


プロフィル おかざき・ゆうすけ 1981年呉市出身。広島商高、神戸学院大卒。四国アイランドリーグの徳島などを経て、2014年武田高に赴任。15年に監督就任。今夏の県大会ではベスト4に導く。

 

 



スポーツ対案ダイソー武田

 

量より質。選手の自主性重視(岩本)

 

ーー岩本さんは脱管理を提唱され、実績を残されました。

 

岩本 選手には指示することを極力控え、選手自らが取り組みを考える場面をつくっていった。指示待ちの生徒は、指示したときには的確に対応するが、レース中など想定外のことが起こったときには力を発揮できなくなる。そのことが分かり、陸上だけではなく学校生活の全てに自分で考えるよう求めた。自主性は生徒の生きる力となり、結果的に脱管理につながった。

 

短時間練習を逆手。フィジカル革命で成果(岡嵜)

 

ーー岡嵜さんは体を強くする「フィジカル革命」を掲げられています。

 

岡嵜 うちは授業の関係で、放課後の練習時間が50分と短く、他校のように長い時間をかけた反復練習で技術を身に付けることができない。短い時間で技術を習得する必要性に迫られたことがフィジカル革命へとつながった。野球に必要な大きな体で素早く動ける体をつくることが、高い技術を習得する近道になると考えたから。フィジカルのトレーニングは20項目ある。トレーニング方法が正しいかどうか、選手の数値を定期的に測定しながら検証も行っている。

 

岩本 世羅高も進学校で放課後の練習時間に制約があり、量より質を大切にした練習を重視した。高校生の長距離レースは、駅伝もトラックも15分前後のタイムで走る5000㍍が基本。つまり高強度の練習は15分でいい。高校生が一日に30~40キロを走る必要性は全くなく、必要でないメニューは省くように心掛けた。

 

岡嵜 野球の場合は、2時間の試合でも実際にボールが動いている時間は合計で10分ほど。選手にはそのことを伝えた上で、野球の技術を身に付けるときは、常にボールを動かしている状態で練習をするように心掛けている。

 

ーーそれぞれの高校時代の練習を振り返ってください。

 

岩本 あまり言いたくはない(笑)。水は飲むな、足は冷やすなといっていた時代だから。例えば夏場の練習は、暑さに強くなろうと、ウインドブレーカーを着用して走っていたが、それがスタンダードだった。現在の選手より2倍の練習をこなしていたかな。結果、練習で疲労困憊になり、試合で力を出せない選手もいた。試合よりも練習をこなすことが目標だった気がする。選手には抜きの練習も必要で、高校時代の経験は、いい意味で指導者になって生きている。

 

岡嵜 昭和の野球だった(笑)。岩本監督と同じように水を飲んではいけない時代。休みも元旦だけで、今日が何曜日かも分からない。いかにその日の練習を無事に過ごすかだけを考えていた。よく練習をしたなと思う。長時間の練習が悪いというのではなく、その経験が今に生きていると思う時もある。逆をすることも必要かなと。

 

ーーまさに「スポコン」の時代ですね。

 

岩本 今の時代でも、順応すれば、忍耐や根性が叫ばれたあの当時の練習スタイルにスッと入ってくる選手はいる。

 

岡嵜 (スポコンのような)時代ではなくなってきているから(笑)。ただ、急には難しいにせよ、スポコンの意図を伝えれば対応はできるだろう。

 

ーーどうような選手が伸びますか。

 

岩本 言葉は悪いが、やんちゃで生意気なタイプ。納得できないことに、「おかしい」と自分の意見を言える子は、はまると本当に強くなる。駅伝では、持ちタイムが良くても、優等生タイプの良い子は使いにくい。気持ちが素直過ぎて、ここ一番のときに良くないことを考えるからだ。勝負事では、気持ちをポジティブにコントロールできる強い選手が力を発揮できる。

 

岡嵜 野球は情報にあふれているが、なんでも手を出すのではなく、「これが大事だ」と思ったら、そのことを結果が出るまでやり続ける子が伸びる。こだわりの強い子は、周囲に左右されることはないし、ブレない。昨年、育成ドラフトでオリックスに入団した谷岡楓太は、まさにその一人。こちらが「まだやっているの」と思ったほどだった。勝つためには、ブレない強さを持った選手が必要になる。

  

ーー選手の指導をするうえで心に留めてきたことは。

 

岩本 言い過ぎないことかな。教え魔のような指導者がいるが、選手はこちらが思うほど指導者の話を聞いていない(笑)。世羅高では、全体ミーティングはほとんどしなかった。その替わりに、大事な話は選手と個別に対応した。全選手に1日一回は声を掛けるように心掛け、強い選手にも弱い選手にも同じように接するようにした。

 

岡嵜 選手には「どうしたいのか」と問いかけてから、話をするようにしている。こちらから「こうしろ」と先手を打たない。グラウンドでプレーをするのは選手。監督の手を離れた空間でプレーをしている以上、最後に頼れるのは自分の力。選手が「こうしたい」という強い意志を持っていないと、ピンチの局面を打破することはできない。

 

ーー未来のアスリートにメッセージを。

 

岩本 スポーツはどの競技でも勝てばうれしいし、負ければ悔しい。その経験を大事にしてほしいし、小さいときにはいろいろなスポーツを経験してほしい。

 

岡嵜 小さいときから緊張するような場面に、ワクワクしながら臨んでほしい。スポーツであってもいいし、何かの発表会でもいい。

 

 

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