12月4~10日は「人権週間」、12月10日は「世界人権デー」。私たちの社会にはいじめや差別、ハラスメントなどさまざまな人権問題が存在しています。中でもインターネット上の人権侵害は深刻化。ネットに慣れ親しんでいる子どもをどう守るのか。江嶋修作さんのコラムを紹介します。
子どもを守るのは、あなた
「いま、ここ」の人権侵害に向き合おう
法務省の掲示板に、次のように書かれている。
「他人への中傷や侮蔑、無責任なうわさ、特定の個人のプライバシーに関する情報の無断掲示、差別的書き込み、インターネット上でのいじめなど人権やプライバシーの侵害につながる情報が流れています。特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動(いわゆるヘイトスピーチ)や、部落差別等の同和問題に関して差別を助長するような内容の書き込みがされることがあります」。
この掲示板に書かれているような人権侵害は、いま、ネット上に溢れている。子ども達、特に中学生、高校生にとって、日常的出来事である。
しかし、多くの大人達は、そんな状況を知らない。正確に言うと、「驚くほど」知らない。「どこか遠く」の出来事と受け止めている。あまり、リアリティ(現実味)を感じていない。
多くの子ども達にとって、ネット上の話題は、親や教師(大人)と語り合うものではない。「秘密基地」は大人に知られないからこそ存在意義がある。これと同じだ。
今のネット社会。様々な悪意に満ちた人権侵害の渦巻く中を生きる子ども達。それをほとんど知らない大人達。この構図が出来上がっている。
ネット上で、なぜ、このような悪意に満ちた人権侵害が氾濫するのか。まず、人権侵害、差別、いじめが発生するメカニズム(仕組み)を、簡単に説明しておく。
人は、毎日の生活の中で様々なマイナス感情を持たされる。劣等感、嫉妬心、不安、欲求不満など。この種の、嫌な感情は蓄積されていくと、大変だ。どこかで解消しないと生きていけない。
どうするか。一番手っ取り早い方法は、こうする。自分の中に溜まった「嫌なもの」を自分の手で取り出し、「誰かいないかな」とそれを投げつける相手を探す。
相手は誰でもいい。見つけた(勝手に決めた)相手に向けて、それを投げつけて解消しようとする。この「投げつける」行為を、大人の世界では差別と言い、子どもの世界ではいじめと言う。
「フラストレーションの内調整のメカニズム」による説明、集団力学的解釈である。
人権侵害、差別、いじめは、もちろんその被害者に精神的苦痛を与えるが、加害者の精神(心)をもむしばむ。
だから、わが子が人権侵害「されない」ようにするだけではなく、「しない」ように見守ることが大事だ。
インターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件の推移
公益財団法人人権教育啓発推進センター出展の「公益財団法人人権教育啓発推進センター発行「あなたは大丈夫? 考えよう!インターネットと人権〈三訂版〉」では、あなたの「インターネットの使い方」についてチェックすることができます。人権侵害をしてしまっていたり、事件に巻き込まれるリスクを高めたりしているかも。ぜひチェックしてみてください。
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江嶋修作さん
解放社会学研究所・所長
横浜国際人権センター・理事、人権問題を中心に執筆、講演活動する社会学者