夏休みは美術館でさまざまなアートに出合う良いチャンス。東広島市立美術館の松田弘館長に、大人と子どもが一緒にアートを楽しむコツを伺いました。
目次
会話のヒント その1 この生き物は何だろう
作品を見ながら、「これは何だろう」と問いかけると、会話が広がります。問いかけは、子ども、大人、どちらからでもいい。見た目や作品名などから、いろいろな方向に空想を自由に膨らませて、お互いが「それ面白い」「そうだったら、きっとこうだよ」など、どんどん広げていきます。
リアリティーのない会話ですが、それがとても楽しい。例えば、写真下の「イドウシキ」(戸川幸一郎)を見るとき、この生き物の大きさや歩き方、背中の町には人が住んでいるのかなどを空想してみましょう。人それぞれの空想があり、どれもが正解。
「これは何だろうね」
「動物だよ」 「ネコにもウサギにも見えるな」 「見たことのない生き物だね」
「どうやって歩くのかな」
「ゾウみたいにかな」 「飛ぶかも」
「どこに行くのかな」
「背中の町に何人 住んでるんだろう」 「名前をつけてみよう」
会話のヒント その2 何が描かれている?
大人が見て名称が分かるものが描かれている場合にも、子どもにはまず「何が描かれているかな」と聞いてみましょう。その答えたものがどういう状態か、それを見てあなたはどんな感じがするのか、というように会話を広げていきます。大人も「私はこう感じるよ」と話し、一緒に作品の世界を楽しんで。
何が描かれている?
空に大きな鳥がいる
鳥がどうしているかな?
まちを包んでるみたい
どんな感じがする?
教えて!館長さん
Q.子どもが 作品に関心を持たないときはどうすればいいでしょうか
A.子どもは、美術館自体にも興味を持ちます。走りたくなったり、あれこれ触りたくなったりして、作品を見ないという状況も多くあるでしょう。そのときは無理強いをせず、大人が見たいものは見て、帰ればいい。同じ作品展でも何度か行くと、反応も変わってきます。
●その日は諦めて、日を変える
●1作品だけと決めて「何だと思う?」と聞いてみる
●大人が気になる作品をじーっと見てみる。子どもはその行動が気になり、作品にも関心を示すこともある
第35回現代絵本作家原画展
「戸川幸一郎 おもいコロコロつながって」
2022年7月30日(土)~9月25日(日)
東広島市立美術館(東広島市西条栄町)
休館日/月曜日(祝日の場合は翌平日)
理解しようとせず 空想を楽しむ
大人と子どもでアートを楽しむときは、ぜひ、大人も子どもの目線で作品を見てみてください。大人はつい、これまでの経験や知識を使って、作品をどうにか理解しようとしてしまいますが、理解ではなく、自由に空想してみましょう。自由な空想なので、間違いはありません。思ったことを子どもとどんどん話して、独自のストーリーを作っても良いでしょう。大人同士で空想トークしても楽しいですよ。館内で話すときは、声のボリュームは控えめに。
アートは日常と違うものを提示してくれます。それを見て、驚いたり発見したり。そして、新しい価値観や世界観に触れて、自分の感覚が更新されます。更新されるときに生きる喜びを感じるのだと思います。ワークショップなどのイベントに参加して体感することも、感覚の更新につながります。…こう語ると難しいように感じますが、まずは「美術館に涼みに行こうか」でもいいです。非日常の空間を楽しんでみてください。
県内の作品展
夏休みにさまざまな美術館に行ってみてはいかが。
第26回平和美術展
基町高等学校の生徒と被爆体験証言者との共同制作による「原爆の絵」原画展
7月14日(木)~8月14日(日)
被爆体験証言者と基町高校の生徒が共同で制作している「原爆の絵」の原画100点を展示。「生命の尊厳」をあらためて考えるきっかけに。
はつかいち美術ギャラリー(廿日市市下平良)
休館日/月曜日
安野光雅美術館コレクション 安野先生のふしぎな学校
7月8日(金)~9月4日(日)
独自の世界観を持つ絵本作品が国内外で評価される作家・安野光雅氏の絵本原画を展示。会期中、ワークショップなど関連イベントも行われる。
広島県立美術館(広島市中区上幟町)
休館日/会期中無休
特別展 グリコ展 須田国太郎の愛したグリコのおもちゃ
7月30日(土)~9月26日(月)
栄養菓子「グリコ」のおもちゃの100年の変遷を、洋画家・須田国太郎コレクションとあわせて紹介。小さなおもちゃの世界は、子どもから大人までが楽しめる。
三之瀬御本陣芸術文化館(呉市下蒲刈町)
休館日/火曜日(8/16は開館)