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(SUN)

東広島の酒 海外に積極展開 認知度高めブランド化推進を

  • 2022/09/19

日本食ブーム追い風

 日本酒の輸出が好調だ。国税庁の発表によると、日本酒の輸出金額は、2010年以降、12年連続で過去最高を更新。海外での日本酒の人気ぶりをうかがわせた。酒どころ・東広島市でも、海外に目を向ける蔵元は多い。東広島の蔵元の海外展開の現状をまとめ、未来を展望した。(日川剛伸)

 現在、東広島市で本格的に日本酒を輸出しているのは西条町の賀茂鶴酒造、賀茂泉酒造、白牡丹酒造と安芸津町の今田酒造本店の4社。

 賀茂鶴酒造の海外展開の歴史は古く、明治時代の1896年にハワイに輸出した資料が残っている。現在は、県内の蔵元では最多の25カ国に輸出を行っている。賀茂泉酒造は、2000年代に入って本格的な輸出に乗り出し、現在、14カ国に出荷する。今田酒造も2000年代から海外に目を向け、欧米を中心に20カ国に輸出。今田美穂社長兼杜氏(とうじ)はおととし、日本酒文化を海外に発信する姿勢が評価され、英BBC放送の「今年の100人の女性」に選ばれた。白牡丹酒造は今春、広島銀行の仲介で中国に初出荷。輸出事業の第一歩を踏み出した。

輸出額比率高めたい

 蔵元が世界に目を向ける背景には、世界的に日本食が流行っていることにある。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、寿司のような知名度の高い日本食が認知され、日本食と切り離せない日本酒が受け入れられている。さらに、国内での日本酒消費量が減少傾向にあることも、輸出に目を転じる要因になっている。

 賀茂鶴酒造の売上高に占める輸出額比率は、21年が9%だったが、25年までには20%まで伸ばす計画だ。海外事業部の天畠健史課長は「現在、中国への輸出が7割近くを占めるが、需給バランスを見極め、米文化であるアジアの国、特に東南アジアへの輸出を強化したい」と力を込める。

 米国が主要な輸出国の賀茂泉酒造は、売上高に占める輸出額比率を現在の15%から、将来的には25%まで高めていく意向。初出荷分の販売が順調な白牡丹酒造は、今後、東南アジア方面の取引国を増やしていく、という。

 賀茂泉酒造の前垣寿宏社長は、海外で販路を拡大する土台作りとして、「一にも二にも日本酒の認知度を高めていくこと。海外での認知度はまだまだ低いのが現実」と指摘。「日本酒は、ビールやワインに比べると、多様性が少ない。例えば、純米大吟醸が一番おいしいと言えば、価値はそこにしかない。日本酒の幅広い価値を世界に発信することが、認知度を高める鍵」と強調する。

 天畠課長は、海外輸出が卸売業者や小売業者を通じた間接輸出が主体になっていることを踏まえ、海外で日本酒の輸入を扱う業者(インポーター)の良し悪しが、販路拡大の大きなポイントになる、と言い、「良いインポーターと良好な人間関係が構築できれば、自然と賀茂鶴の伝道師にもなってくれる」と力を込める。白牡丹酒造の太田雅之専務も「販路拡大には、いかに信頼できる相手を見つけるかが大切になることを認識した」と話す。

 では、東広島の日本酒は世界から認知されるブランドになり得るのか―。

 賀茂泉酒造の前垣寿宏社長は、7つの酒蔵が軒を連ね、煉瓦(れんが)煙突が立ち並んでいる全国で唯一の風景があることや、国の酒類研究機関が立地していること、秋に日本酒をテーマにした酒まつりが開催されていることを理由に、東広島の日本酒が世界に認知してもらう理由付けはできているとし、「あとは最大公約数のブランディングをどう描くか。各蔵元が協力して取り組んでいきたい」と意欲をみせる。

 天畠課長は「グローバルなブランド化の推進には、蔵元だけの努力では限界がある。国や県市など行政の後方支援は不可欠になる」と話す。

 広島国税局の話によると、酒類市場は世界全体で100兆円を超える規模があるとされているが、日本酒の輸出額は、世界の酒類市場の0.1%にも満たないという。裏返せば、日本酒の海外市場には無限の可能性があるということだ。

東広島市 高垣広徳市長の思い G7サミットは好機 「酒のまち東広島」発信を

 日本酒の海外輸出は、事業者にとってもリスクがあり、ニーズに応じてまずは海外貿易を仲介するジェトロ(日本貿易振興機構)などにつなぐ支援をしていきたい。
 また、来年5月に広島で開催されるG7サミットは、「酒のまち東広島」を世界に発信する好機でもある。東広島市が「吟醸酒発祥の地」として世界に知られることは、市の日本酒の消費につながるし、観光資源としても意義がある。さまざまな機会を捉え、販路拡大を行いたい。(市議会のこれまでの答弁から)

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