野球用具を専門に取り扱う東広島スポーツ(東広島市西条土与丸)オーナーの森重康幸さん(53)は、グラブの型付けを手掛ける。少年チームから社会人の選手まで、幅広い野球愛好者の思いに応えている。
森重さんは高校(広島工)を卒業後、福岡県の久保田運動具店に勤務。グラブ型付けのパイオニアとして知られる江頭重利さん(90)に出会い、お湯に浸けて、グラブの型付けを行う「湯もみ型付け」の手法を教わった。技術を身に付けたのを機に同店を退職、故郷の東広島で、父親が経営していた東広島スポーツを引き継いだ。
牛の革で作られるグラブは、湯に浸けることで革に柔軟性が生まれ、型付けがしやすくなる。森重さんは、この特長を生かし、顧客一人ひとりにグラブの使い方や、守備のスタイルなどを聞きながら、数日間をかけて湯もみ型付けを行う。森重さんは「グラブの使い方は十人十色。一つとして同じ型付けはできない、そこが難しさでもあり、やりがいでもある」と目を細める。
森重さんの技術の高さは、動画投稿サービスのユーチューブでも、職人技として野球愛好者が取り上げるほど。親子二代にわたって、森重さんに型付けを依頼する顧客も多いという。
夢は、広島牛の革を使ったグラブを作って、型付けを行うこと。今は、広島の会社とタイアップし、試作品を製作中だ。「野球どころの広島なのに、広島の牛革のグラブはほとんどない。もっと広島にこだわっていきたい」と力を込める。
森重さんにとっては、この秋、二つのうれしいニュースが飛び込んできた。高校時代に、野球部で一緒に汗を流した同級生で、プロ野球・ヤクルトスワローズ監督の高津臣吾さんがセ・リーグ連覇を果たしたことと、野球部後輩の新井貴浩さんが広島カープの監督に就任したことだ。
「今でも付き合いのある2人の躍動は大きな励みになる。彼らにはプロ野球の現場で輝いていてほしいし、僕も彼らに負けないよう、野球を道具の面から支え続けていきたい」
写真 Tadashi Ooya
文 Hikawa Takenobu