住み慣れた地域で、世代や分野を超えてつながり、誰もが安心して生きがいのある暮らしができる地域共生社会。今回のテーマは「地域食堂」。これは、地域のボランティアが中心となって、誰でも気軽に立ち寄り、食事ができる交流の場をつくる取り組みのこと。声を掛け合うことで、孤食の防止となることや、安心できる地域の居場所にもなるため、全国各地で活動の輪が広がっています。今回はその一つ「志和地域食堂あずまや」を取材しました。(東広島市提供)
「地域食堂あずまや」のメンバーに伺いました
活動のきっかけ
活動のきっかけは、東広島市志和町で営業する地元新鮮野菜市「和楽日(わらび)」で、「1人だから料理も面倒でレトルト品や出来合いの食品に頼りがち」という声でした。特に、1人暮らしの高齢者は食事が偏りがちだと知り、仲間と一緒に何か力になれないかと思うようになりました。
ちょうど、東広島市社会福祉協議会の広報紙で、地域食堂・子ども食堂の活動を知り、「これだ!」と思い、さっそく社協へ話を聞きに行きました。コミュニティソーシャルワーカーの尾崎妙華さんから他の地域の事例についていろいろ教わり、東広島市内でこども食堂を運営している団体、八本松の「SATO☆はちほんまつ」へも見学に伺いました。
多くの支援により地域食堂開店
場所の整備や周知方法など私たちだけではできないことも多かったのですが、尾崎さんが「住みよい町志和町ネットワーク」につないでくれて、特別養護老人ホーム「おうぎの里」や民生委員さんをはじめ地域の方が支援に加わってくれることになりました。皆さんのご協力により準備を進めて、2022年4月から「あずまや」を開始。コロナ禍で集まれないため月2回のお弁当販売や、楽しく参加できるイベントを開催。野菜やお米を寄付してくださる方もいてとても助かります。
お弁当で工夫していること
できるだけ塩分を控えるように、また季節のものを入れるように心がけながら、1つ300円という価格を維持するためのメニューづくりには苦労しています。でも、「彩り豊かで毎回楽しみ」「ここのお弁当しか食べられない」という地域の方の声が嬉しいです。
安心できる雰囲気づくり
緩やかな見守り活動
利用されているのは、「和楽日」の常連さん、住民自治協議会で配ったチラシで知った人、常連さんの知り合いから徐々に広がり、東志和を中心に志和町全域から車や徒歩で来られます。気張らず、構えず、「あずまや」らしいゆるさも大事にしながら、志和の緩やかな見守り活動としても続けていきたいです。いずれは一緒に食卓を囲んで食事や会話をする、実家に帰ってきたような、「なにか安心できるな」と感じる場所にしたいと思っています。
VOICE 活動支援者の声
住みよい町 志和町ネットワーク
地域密着型特別養護老人ホーム
おうぎの里 副施設長
井藤 大作さん
「住みよい町 志和町ネットワーク」とは志和の社会福祉法人の職員など福祉に関わる有志が集まって、地域の困りごとを一緒に考えるネットワークです。ちょっとしたお話相手から災害ボランティアまで、ひとつの事業者だけでは負担が大きい活動を、力を合わせて行っています。
志和町には「地域の困りごとを何とかしたい」という“種火”となる想いを持っている方がたくさんいます。「あずまや」もそのひとつ。主役はあくまで地域団体・住民ですが、私たちは“種火”を“大きな火”にしていくためのお手伝いができたらと思って活動しています。
「あずまや」の開催場所は、以前から野菜市が開かれていたので、地域の皆さんにとってよく知っている場所。だからこそ安心して訪れているのではないでしょうか。「あずまや」の活動を知って、「私たちもやってみたい」という人も志和町で増えています。
東広島市社会福祉協議会
コミュニティソーシャルワーカー(CSW)
尾崎 妙華さん
私はCSWとして、志和地域での生活相談や、様々な支え合い活動に関する支援を行い、志和町の皆さんが安心して暮らせる地域づくりを推進しています。「あずまや」は、「地域食堂をやりたいけど、何から始めたらいいのか分からない」という相談を頂いたことから始まりました。市内の先進的な事例を参考にしつつ、地域の皆さんと一緒に考えて実現できたことが嬉しいですね。
東広島市役所 健康福祉部 地域共生推進課 東広島市西条栄町8-29