東広島市の小学校で、教室の壁を越えて、市内の他の小学校や地域の人達などとオンラインでつながって学ぶ授業が行われています。
面白そうですね! 広島大学と東広島市教育委員会が連携して行っている「広域交流型オンライン社会科地域学習」についてリポートします。
監修 東広島市教育委員会
広域交流型オンライン社会科地域学習とは
いつもの学校、いつもの教室。
でも黒板の横には大きなモニター、そしてモニターの画面には学校の外の映像が映し出されています。
広域交流型オンライン社会科地域学習は、児童が教室にいながら、オンラインで市内の他の小学校とつながり、東広島市内各地からの中継を交えながら、リアルタイムに意見や情報を共有して学び合う授業です。
東広島市教育委員会が広島大学教育ヴィジョン研究センター(以下、EVRI)と連携して、2021年度から社会科の授業として始めました。
授業の進行はEVRIの草原和博教授が行い、教室では学級担任が学級の意見を取りまとめたり、大学院生が授業進行のサポートをしたりします。
そして市内各地の中継先には大学院生が趣いて、現地の実況や関係者へのインタビューをします。
児童はタブレット端末や社会科の副読本のほか、「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ のん太の学び場」を使って、学びを深めていきます。一方的に教わるだけではない、主体的で対話的な学習方法ですね!
【ここがすごい1】社会の構造を身近な事例から学ぶ
2022年度の単元は、こちら。
5月 | 4年生 | 広島中央エコパークは,なぜ「広島中央」なのか?本当に「エコ」な「パーク」なのか? |
6月 | 3年生 | お店にぴったりなキャッチフレーズをつけよう! |
7月 | 5年生 | 教科書にのせたい東広島市の農家はどれだ! |
9月 | 3年生 | 東広島市の水は,なぜ高い,なぜ遠くから来る? |
10月 | 4年生 | 海からはなれた東広島市に自動車工場はできるだろうか? |
11月 | 3年生 | 東広島市に新しく交番か駐在所をおくならば,どこがいい? |
12月 | 5年生 | メディアはどのようにして収入を得ているのだろう? |
1月 | 3年生 | もしも東広島市に広島大学がなかったら? |
2月 | 4年生 | 東広島市を外国人市民にとってくらしやすいまちにするには? |
単元名からも分かるように、授業の内容は、東広島市の地理・歴史・政治・経済・文化と多岐にわたり、児童は自分が住んでいる東広島市について、深く学ぶことができるようになっています。
6月の授業では、3年生が「お店にぴったりなキャッチフレーズをつけよう!」と題して、それぞれのお店の特徴を調べ、さらにキャッチフレーズを作るという、もはやブランディングともいえる課題に挑戦。
授業では、大学院生が市内3つのお店(スーパーマーケット、直売所、コンビニエンスストア)から中継し、お店の方にインタビュー。
「どんな商品を売っているのですか」
「1日にお客さんはどれくらい来ますか」
「お客さんはどこから来ますか」
「お店は何時に開いて、何時に閉まりますか」
これらの質問に対する答えから、児童は3種類のお店それぞれの特徴や魅力を考えました。
また12月には、5年生が「メディアはどのようにして収入を得ているのだろう?」ということについて考えました。
東広島市で毎週発行されているザ・ウィークリー・プレスネットと、毎日発行されている中国新聞の違いや共通点を探り、プレスネットが広告収入により発行できることなどを発見。
インターネットの検索エンジンなども、利用者ではなく企業が広告費を出していることにより、私たちは無料で利用できていることも知りました。
普段何気なく目にするものから、社会の仕組みを学んでいます。
【ここがすごい2】様々な人と対話ができる
学校の授業といえば、同じクラスの友達学ぶのが一般的です。
一方、広域交流型オンライン社会科地域学習では、オンラインで他の学校とつながって授業を受けることができ、お互いの様子は画面を通して見聞きすることができます。
今年度も、単元によっては9校19学級の600名以上が同時に授業を受けました。
自分のクラスでは出なかった意見、他の地域に住んでいるからこその視点、これまでになかった考え方を他校の児童から学びます。
同じ東広島市内とはいえ、地域事情も生活環境も異なることを児童たちは肌で感じているようです。
そして、大学院生が市内各地から中継することで、地域の人や関係者と、直接質問できる環境が実現。
学びを進めていく中で生まれた疑問を直接関係者に尋ねられることは、大きな刺激になるでしょうね!
【ここがすごい3】教材が豊富
教科書や資料集、副読本はもちろんのこと、一人一台配布されているタブレットもしっかり活用しています。
ときには、授業を受けている全ての児童のタブレット端末に同じアンケートが表示されて、各自回答。
回答結果が すぐに閲覧できるなど、オンラインの良さが生かされています。
また、EVRIと東広島市立図書館が共同開発した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツ のん太の学び場」は、市内各地域の特色をはじめ、交通、産業、福祉、国際交流などを、動画を交えながら解説しています。
社会科の副読本「わたしたちの東広島市」と併せて事前・事後の学習に使うことで、より深く学ぶことができます。
オンライン学習を通して、なかなか出会えない人たちの意見や声を聞けることも、魅力的な教材と言えるかもしれません。
東広島市では広島大学と学校、そして地域の住民や事業者が連携しながら、教室、学校、地域の垣根を越えて、学ぶことができる環境が整っています。
自然や生き物、宇宙、プログラミングまで。「科学の芽」を育む講座
広島大学のほかにも、大学や研究機関が集まる東広島市。
大学や研究機関、企業がもつ専門的な知識と技術を生かして、体験型の出前講座が実施されています。大学教授や研究者らを講師に迎えて、児童生徒の科学に対する興味・関心を高めることを目指します。
令和4年度は、7月から2月にかけて、22校61学級で講座が開かれました。
内容は、エネルギー、粒子、生命、地球、算数・数学、食品、健康、プログラミングと多岐にわたります。
「ポリゴンまんげきょうをつくってみよう!」
「宇宙にも生きものはいるの?」
「イネはスポーツドリンクが好き?嫌い?」
「イルミネーションのプログラムをつくろう!」
など、名前からしておもしろそうな講座の数々。いつもの授業の枠を超えた体験に、子どもたちはワクワクして臨みました。
授業後のアンケートによると、講座の満足度は87.0%、理解度は98.1%!
普段の授業ではなかなか成功しない実験や観察も、丁寧な準備とサポートにより子どもたち全員が体験できるなど、専門性の高い外部講師だからこそ実現できる講座となりました。
(写真の提供:広島大学教育ヴィジョン研究センター、東広島市)
【問い合わせ】
オンライン地域学習:東広島市教育委員会教育総務課
電話:082-420-0974
科学の芽育成講座:東広島市教育委員会指導課
電話:082-420-0976