1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、外国人にも分かるように配慮した簡単な日本語「やさしい日本語」が考案された。多くの外国人が日本語を十分に理解できず、必要な情報が得られないことが理由で被害を受けたためだ。外国人の人口比率が中国地方ナンバーワンの東広島市においても人ごとではない。いざというときのため、「伝えたつもりでも伝わっていない」日本語があることを知っておきたい。東広島市市民生活課や、「やさしい日本語」を使った防災訓練に取り組む西条住民自治協の正原耕治国際交流部会長などに話を聞き三つのポイントにまとめた。 (𦚰 貴恵)
「察して」「想像して」は無理
➡ 曖昧な言葉は避けてストレートに表現
日本には「空気を読む」という文化が根強く、相手を気遣い遠回しな表現をすることが多々ある。その曖昧な表現に日本人ですら迷うことも。気遣うことは大切だが、曖昧な表現は初級の日本語学習者には伝わらないことが多い。
例えば、先輩に食事に誘われた後輩は「大丈夫です」と返答。後輩はやんわり断るために「大丈夫」とやさしい言葉を使ったつもりだが、先輩はどちらの意味の「大丈夫」なのか判断に迷う。日本語を学びたての外国人ならなおさらだろう。
「表現から想像してほしい」というのも難易度が高い。災害時に「亀裂が入っている建物には近づかないで」という警告も、遠回しな表現だといえる。「壊れた建物」といったストレートな言葉の方が伝わりやすい。
心情伝える〝例えた言葉〟は困難
➡ 擬音語・擬態語は使わない
心情を伝えるために、ジェスチャーと同時に無意識に擬音語や擬態語を使うことが多い。擬音語は「ザーザー」のように音を表す言葉。擬態語は「つるつる」など様子を表す言葉。これも理解が難しい。
外国人がアルバイト先で、「棚がボロボロじゃけん、買い替えよう思うとるんよ」と言われ、理解できなかった。「ボロボロ」のような擬態語は理解しにくい。方言も伝わらないことがある。
また、外来語にも注意が必要。日本で使われているカタカナ語の中には、本来の意味とは違って使われているものが多い。例えば、生活に必須な水道や電気、ガスなどを指して「ライフライン」と言うことがあるが、英語の「Life line」は「命綱」という意味になる。
「ないことはない」はどっち?
➡ 日本人でも難しい二重否定は避ける
「明日、行けないことはない」のような二重否定は、「行きたい」気持ちを強調したい時にあえて使用する時もあれば、気乗りがしないため遠回しに言い表す時もあり、日本人でも分かりにくい。
外国人が混乱しないよう二重否定は使わず、「明日、行きます」、「明日は、行くことができません」とシンプルにはっきりと伝える。
日本人がよく使う「今朝」、「強い」も意味によっては難しい場合が。「今朝、宮島付近を中心に強い地震がありました」は、「今日の朝、宮島などで、大きい地震がありました」とやさしく言い換える。