米の卸を中心に生活必需品を扱う食協(本社・広島市南区、武信和也社長)。2022年には、武信社長の故郷である東広島市志和町の山陽自動車道志和インターチェンジ近くで、最新鋭の設備を備えた志和精米工場が稼働した。志和精米工場の稼働を機に、さらなる飛躍を期す食協を取材した。(日川剛伸)
処理能力は日本一
志和精米工場は、鉄骨2階建て延べ床面積約8000平方㍍の規模。同社の志和流通センター内に整備した。サタケ(東広島市)の最新鋭次世代型精米プラントを導入し、コンピューター制御による全工程一元管理を実現した。毎時30㌧の処理能力は国内トップクラスだ。
安佐北区の旧工場が老朽化したため新築移転。処理能力は旧工場と比べ5割も高まった。工場に隣接して、冷蔵や冷凍、常温、低温の四つの温度帯を持つ食品倉庫を持つ。工場は食品管理システムの国際基準である、HACCPの認定工場でもある。
食文化を伝えよう、と積極的に工場見学も受け入れる。地元の小中学生たちを中心に、これまでに500
0人を受け入れた。実際に動いている機械を見ながら、最新の技術について学べるほか、各産地のごはんの食べ比べや、食品倉庫の見学もできる。倉庫では、極寒のマイナス20度の世界を体感でき、子どもたちに人気という。
武信社長は「飽食の時代だからこそ、工場見学を通して、日本人の食文化の原点である米の大切さを知ってもらいたい」と話す。
四つの事業が柱
食協は、1950年に県内の米穀小売業者で発足した広島食糧協同組合が前身。食協は同組合の全額出資で設立された。軸となる米穀の卸事業のほか、食品の卸事業、LPガスや灯油などを販売する燃料事業、アクアクララ中国では、宅配水事業を展開する。
米穀は中四国地方を中心に集荷し、精米して販売する。取引先は中四国や九州地区の量販店や大手コンビニ、米穀店などだ。オリジナルの商品開発にも力を注ぐ。食品は業務用の小麦粉や食用油、調味料などを扱い、大手食品メーカーなどに納入する。米穀事業と食品事業で売上高の9割を占める。
今年からグループ会社「食協ロジスティックス」の物流事業が本格スタート。7月には、同流通センター近くに、志和精米工場で精米する玄米を保管する第一倉庫が完成。年内には、食品の原材料を入れる第二倉庫の建設に着手する予定。その後、多目的に使用する第三倉庫の建設も計画する。
物流倉庫の建設は、同センターが手狭になったことや、災害時の迅速な供給体制を確立することなどに加え、物流のアドバンテージとなる志和IC近くの好立地を生かしたいからだ。
社員教育に力
3年前から大学生の新卒採用にも積極的に取り組む。昨年は11人、今年は20人が入社した。全社員17
0人のうち、20代が50人を超えるようになった。会社説明会には、武信社長自ら出席し、会社の思いを話す。CMには若い社員を登用し親近感をアピールする。こうした戦略が奏功してか、日経が調査した大学生人気企業ランキングの中四国に本社を持つ会社で昨年は13位、今年は8位に入った。
その若い社員を中心に教育にも力を注ぐ。全社員を対象に研修を徹底し、「食協MBA」という研修では、入社1~3年目の社員を中心に、社会人としての礼節や、損益の知識などを徹底して教育する。「人は財産。会社が伸びるためには人財教育は不可欠」(武信社長)と、社員教育に投資する。『一人一人が主役。社員一人一人が輝く年に』。今年の食協のキャッチフレーズだそうだ。
会社概要
本社は広島市南区松川町。会社の前身は1950年設立の広島食糧協同組合。91年に同組合が全額出資し、食協株式会社を設立。2018年に東広島市志和町に志和流通センターを開設。22年、深川精米工場(安佐北区)を志和町に移転し、志和精米工場とする。24年3月期の年商は240億円。今年度は250億円を目指す。社員数は170人(24年4月1日現在)
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武信和也社長が「ワード」に込めた思いは?
■社会貢献
何十年もママさんバレーボール大会や、少年ソフトボール大会を主催していますし、広島東洋カープやサンフレッチェ広島のスポンサーも務めています。また、子どもたちを対象にした田植えや稲刈り体験、工場見学も積極的に行っています。
社会貢献に目を向ける背景には、四つ葉のクローバーをあしらった企業マークに込めた思いがあります。四つ葉のクローバーは、「愛情・健康・快適・安全」の四つを表現しており、四つを追求しようとすれば社会貢献は不可欠だからです。
単に利益だけを求める会社では、お客さまから信頼を得ることはできません。
■クレームは好機
仕事を進めていく上での失敗やミスは、人間ですから起きることはあります。ただ、誠心誠意、真摯(しんし)な対応や努力を続けていけば、最初は相手方に怒られても、通じるときが必ずきます。だから、社員には、特に幹部社員には「クレームは食協のファンをつくっていくチャンスだぞ」と訓示しています。
だからでしょうか。「一人一人が一生懸命、お客さんをサポートし、礼節を重んじる」という言葉が自然な形で、会社の風土になってきているようです。
■日本一
「日本一」は2016年の社長就任以来、かじ取りのキーワードに掲げていた言葉です。技術も生産能力も日本一の志和精米工場を整備しましたし、米の博士号といわれる「三ツ星お米マイスター」取得者も全国一になりました。「五ツ星お米マイスター」も日本一を目指します。
次に掲げるのは、社員満足度が日本一高い会社です。社員が、やりがいを持って伸び伸びと働ける会社にしたいと思っています。