光が強ければ強いほど、影の闇はより濃くなる。
SNSを通じた交流、ネットを活用した企業活動、豪雨など災害情報のリアルタイム配信など、今や社会を支えるインフラとなったネット。しかし、その裏には、SNSを悪用した詐欺、SNS上の交流をきっかけとする青少年犯罪、日本企業を襲うセキュリティー侵害による被害など、従来では考えられなかった犯罪が多発している。今回そうしたネットの光と闇に焦点を当てる。
InstagramやYouTubeなどのSNSの魅力は、ますます高まっている。SNSは、人々の交流を促す役割に特化したサービスとして機能を強化してきた。最初はシンプルなマッチング機能だったが、近年ではユーザーの操作履歴から個人の嗜好(しこう)を細かく分析し、個別に最適化するようになっている。
こうしたSNSの機能は、2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ元大統領が当選したことにも多大な影響をもたらしたことが、その後明らかになった。
東京都知事選において、落選したもののYouTubeを駆使して大躍進を果たした石丸伸二元安芸高田市長も記憶に新しい。
一方、自分の意見に近い投稿ばかりが表示されることによる分断は社会問題になりうる。これは、交流を促進するための機能が「SNSが個人の考え方に大きな影響を与える」ことのデメリットである。
SNSのこうした機能は、犯罪者に悪用されており、すでに電話による特殊詐欺をはるかに超える被害額が出ていることが警察の発表により明らかになっている。
また、SNSでは、危険な人物との出会いも考えられる。そのため、無防備な若年層が犯罪に巻き込まれるケースも増えていることは、最近の事件を振り返っても明らかだろう。
SNSでの出会いや交流を楽しむことは、特に若い方々にとってなくてはならない娯楽となっている。SNSを楽しむのは悪いことではない。しかし、SNSの相手側には多くの犯罪者が潜んでおり、経験が浅く人格も未熟な若年層にはそれが理解できないことに親や保護者は配慮しなければならない。
今や、大人でさえSNSで巨額の詐欺被害に遭う時代である。著名人をかたる投資詐欺や恋愛感情を利用する海外ロマンス詐欺など、SNS利用者が被害者になるケースが急増していることに目を向ける必要がある。
また、直接的な被害は出ないが、フェイクニュースによる偏見、それによる社会の分断という闇は民主主義を揺るがしている。
冒頭に述べたように、SNSはさまざまな方々との交流を促し、人生を豊かにすることができる。そうした明るい側面を光とするならば、SNSを悪用した闇もより濃くなっている点に注意する必要がある。
セールスシード株式会社 代表取締役 菅生一郎
広島県生まれ。1994年、上智大学経済学部経営学科卒業。外資系企業のマーケティング職を経て、2004年、家業である山陽一酒造株式会社の代表取締役に就任。2013年、神戸大学専門職大学院MBA修了。2016年にセールスシード株式会社を設立。2024年より神戸・甲陽デザイン&テクノロジー専門学校 ホワイトハッカー専攻 講師。応用情報処理技術者、CompTIA +/Network+、ITコーディネータ保有。