前回市議選(2019年)は定数30に36人が立候補。投票率は41.69%だった。(写真はポスター掲示板に掲示された立候補者のポスター)
「選挙?誰がなっても一緒だから、あまり関心がありません」。市民からよく聞く言葉だ。なぜ、市民は政治に無関心なのか。本紙編集委員の吉田実篤と日川剛伸、政治評論家の伊藤正義氏の3人が分析した。
(日川)
投票率低下 若い世代の動向影響
吉田:市民の政治に対する無関心は、市議選の投票率に如実に表れている。
日川;東広島市議選の投票率は、2011年は49%だったが、8年後の19年には42%まで下がっている。つまり、10人の市民がいたら4人しか投票にいっていないということだ。ただ、投票率の低下は、他の県内市町や、市と類似都市も同じような傾向だ。
伊藤:気を付けて見なければならないのは、50歳代以上の投票率はそんなに下がっていないということ。30歳代以下の投票率が極端に下がっており、議会制民主主義の観点からいうと、大きな問題をはらんでいる。投票率は年代別に考察しないといけない、というのが今の専門家の見方だ。
吉田:東広島市は若い世代が多い街。東広島の投票率の低下の要因は、年齢構成が多分にあるといえる。若い世代が投票に行かないことは、政治家にどんな影響を与えているのか。
俯瞰した政策を
伊藤:高齢者向けの政策が中心になるということ。例えば景気回復の話をしても、投票に行く年金世代には、生活が景気動向に左右されないから、あまり受けない。だから中間層以上に焦点を当てた政策の選択になる。これが地域社会をゆがめている要因になっている。
日川:現職市議の年齢構成は50歳以上が圧倒的。若い人が立候補しないのも、若い世代の政治への無関心を増長している。前回の市議選で、30歳代の若い市議が当選した際に、ある大学生が「投票が無駄にならなくて良かった。今までは、年配の人に投票しても、どうせ自分の意見は通らないと、投票に行かなかった」と言っていたが本音だろう。
伊藤:若い世代が政治に目を向けてもらえるような、各年齢層の人口に比例して議員定数を割り振る「世代別選挙区制度」があってもいい。
日川:東広島の政治が、地盤と組織を中心とする40%の市民で選ばれた人たちで決められることに違和感を覚える。一部の人たちだけの政治であってはならない。
吉田:市議の仕事で言えば、道路や水路の修繕など地域の要望をくみ取ることも大事だが、若い世代が関心を持つような、教育や環境問題など市全体を考える俯瞰した考えを持つことも大切な仕事だ。
日川:ただ、多くの市議が悩みとして抱えているのは、俯瞰したような政策は票になりにくいということ。だから、地域要望は無視できないと。市議からは、議員も変わるけど、有権者も変わってほしい、という声をよく聞く。
伊藤:それは本音だろうが、4年間任期があるのだから時間はある。地域のことも、市全体に立った政策も全て対応していくのが市議の役割。若い世代に目を向けた政策をどんどん提言してほしい。
吉田:比率的には。
伊藤:五分五分でいいと思っている。
日川:市民が政治に無関心なのは、市民が政治家の顔や仕事を知らないことも大きな原因の一つ。このため、市議会では、5年前から各常任委員会で地域に出向いて市政報告会を開いている。積み重ねは大事だ。
吉田:なにせ市議は30人(欠員1)いるから。
伊藤:市議の仕事を市民に伝え、市民に知ってもらうことは、地域メディアの大きな使命。仕事ぶりを伝えることで、市議には張り合いが生まれ、市民と市議の距離も近くなる。
吉田:今回のコロナ禍で、政治を自分たちの問題として捉える市民が増えてきたことを感じる。今後、メディアの伝え方は大きく問われるだろう。
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