ここでページで記載した「ハッ」とさせられた作文を紹介する。
令和元年度に実施
「第39回全国中学生人権作文コンテスト広島県大会」広島法務局長賞(広島法務局・広島県人権擁護委員連合会主催)
「第39回全国中学生人権作文コンテスト中央大会」奨励賞(法務省・全国人権擁護委員連合会主催)
「誰もが幸せに生きていくために」
東広島市立磯松中学校三年 見崎晶
世の中には、障害がある人と何の障害もない人が存在する。私の親族には、段々と目が見えなくなっていく病気をもったお姉さんがいる。調べると「網膜色素変性症」というらしい。遺伝子の異常が原因だと言われているそうだ。残念ながら現在のところ、根本的な治療法は見つかっておらず、暗順応改善薬やビタミン剤、その他にも色々な薬が処方されているが、確実な効果は得られていないらしい。私が、お姉さんに会った時には、もうほとんど目が見えていなかった。小さな段差も危ないので、一人で行動せず、隣にいつも旦那さんや誰かがついていた。そんな様子を見ていて、初め私は、
「目が見えないのって、大変だな。かわいそうだな。」
なんて考えていた。でも、お姉さんと一緒に過ごすうちに、その安易な考えは間違っていたことに気づいた。お姉さんは、幸せそうなのだ。自分のことを受け入れて常に気にかけてくれる優しい旦那さんがいて、可愛い子供がいて、とても幸せそうなのだ。私は表面ばかりを見て「かわいそう」と思っていたことが、なんだかとても失礼で恥ずかしく思えた。お姉さんの姿を通して、たとえ障害があったとしても、私たちと何も変わらない同じ人間なのだという考えを持てるようになった。
その出来事から何年か後、私は自転車レースの審判を始めた。私の親が自転車レースの手伝いをしていて、何回もついて行くうちに興味を持ち始めたのだ。そして、小学六年生の時には、審判資格もとった。高校生や大人の自転車レースの手伝いをしていた時に、自転車レースで知り合った人に「スペシャルオリンピクス」の手伝いに来ないか?と誘われた。「スペシャルオリンピクス」とは、何らかの障害をもった子供から大人までが参加する自転車レースだ。私の両親は、介護福祉士の経験があり、姉も介護福祉士、細かく言えば児童福祉士の道に進もうとしている。そんな家庭環境の中、私自身、福祉の仕事は身近に感じており、自分は保育士か幼稚園の教員を目指しているので、良い経験になると思い手伝いに参加した。しかし、どんな風に対応すればよいか不安だった。親戚のお姉さんとは全然違う障害がある方が沢山来られるので障害によって対応を変えないといけないのではないか、自分は上手く対応できるのだろうか、といろんなことを考えていた。
そして、いよいよスペシャルオリンピクスの開催となった。そこには、沢山の方が来ていて、耳が聞こえない人、声が出せない人、ダウン症の人など、私が想像していた通り、色々な障害がある方が来られていた。しかし私が不安に思っていた心配は一切必要のないことだった。選手の方たちは、明るく私達に話しかけてくださり、他のスタッフの方達も温かい方ばかりで、とても良い雰囲気の中、楽しいレースだと感じた。私は、その後も何度かスペシャルオリンピクスに参加した。障害があっても、それを気にせず、ただ一位を取ることだけを目指してゴールまで一生懸命ペダルをこぐ姿は、とてもかっこいいと思った。走り終えた後の選手たちは、とても幸せそうだった。自分が好きなことを、自分が好きな仲間たちとできる・・・ そんな幸せを感じていたのではないかと思う。全力で走ってくる方に向かって、私も全力で応援した。これこそが、人と人が心から繋がるということだと感じた。このような機会が、もっと増えればいいと思った。
しかし、世の中では、障害があるから、見た目が変だから、話し方が変だからという理由で、いじめが起きたりすることを耳にする。私は、そんなニュースを見たり聞いたりする度に、本当に腹立たしく思う。なぜ、表面しか見ないのかと思う。深く知りもせずに、ちょっと他の人と違うからといって、排除したりいじめたりするのは、おかしい。障害がある方も、なりたくてそのような状態になったわけではないと思うし、自分自身も何があるかわからない。事故や病気で障害が残ることもある。それなのに、障害があるからといって、幸せに生きていく権利を、他人が否定して良いわけがないと私は思う。
私はこれまで、障害のある方と沢山接してきた。その度に思うことは、いつも同じだ。人は皆、障害があるないに関わらず、同じ人間だということ。幸せに生きる権利は誰にもある。私は、このことが少しでも多くの人に広まって、全ての人が平等に幸せである世界になることを願っている。
来年は、オリンピックの年だ。パラリンピックが開かれる年でもある。この機会に、ぜひ皆さんにも、障害がある方が生き生きと競技する姿を見てもらいたい。そして、私が感じたことを感じてもらいたい。
今回の取材先はどこも熱心に、かつ真剣に相談者に向き合っていた。人権とは無関係の相談にも応じていた(時間が許す限りでしょうが)。
相談は最後に、という意味ではない。マスコミの報道が事件、問題提起に偏っていることも多くある。普段の生活の中で解決されている「人権侵害」も多くあり、子ども達は自然に人権問題に向き合っていることも伝えるべきだと思った。報道の問題提起が「あら探し」にならないように自戒の念も込めて…。
今回の取材の中で、さまざまな相談を受けている弁護士にも話を聞くことができた。東広島にも支部がある弁護士法人山下江法律事務所(電話(0120)783409)でも、人権にかかわる相談に、初回無料で応じているという。
周囲との協力と、専門家の力をうまく使って、一つでも多くの人権問題解決が進むことを願う。
プレスネット編集委員
吉田実篤