東広島市議(定数30、欠員1人)は、言うまでもなく、東広島市政と直接的に対峙できる。前回取り上げた市選出の県議とは大きく違うところで、それだけ市政に責任を負う存在だ。市議会や行政に精通するプロ2氏に意見を聞きながら、筆者の意見も踏まえ、市議の役割と責任について考える。
(日川剛伸、特別取材班)
「政策提案」できる市議に
中身問われる一般質問
求められる市議の役割を聞いたとき、2氏が強調したのは、政策立案能力。その理由として2人は▽政策提案ができる議会は活性化する▽市民の議会への関心も高まる▽執行部は万能ではない。市政の課題を探り、政策を練り上げるのは議員本来の姿―などを挙げる。
市議会では2013年に市議会基本条例を制定し、会派横断で政策を議論する「政策研究会」を立ち上げた。ただ、いまだに研究会による政策的な議案提案はゼロ。休眠状態だ。
では、政策提案ができない要因は何なのか。保守系が3分の2以上を占める東広島市議は、その多くが地域代表としての側面を持っているからだ。「集票のことを考えると致し方ない面はあるが、まだまだ地域からの要望を聞くことだけが仕事と捉える市議が目立つ」とA氏。市議の資質もあげ、「内側から見ていると、《えっ!》と思うような勉強不足を露呈する手応えのない市議もいる」と話す。
本来、政策提案をするべき会派も、その機能を果たしていないことも要因の一つだ。2人に言わせると、現状は議長選出など人事案件のときだけに、数の機能を発揮するだけの存在になっている、という。
市政の重要な問題をただす一般質問も政策立案の契機となる貴重な場だ。昨年、12月の定例会では、過去最高となる20人の市議が質問に立った。市議会が活性化する意味では喜ばしい限りだが、問題は中身だ。
実際、プレスネットでは、昨年の紙面で会派の一般質問の状況を取り上げたが、政策提言に結び付かないような、地域限定の質問や、執行部の施策をチェックするだけの厚みのない質問も多かった。そこで、プレスネットでは、一般質問の内容も問う企画をスタート。今回、12月定例会の良かった一般質問ベスト5を掲載した。
※下表参照
地方分権が進み、地方の議会は行政のチェック機能だけを果たせばいいという時代ではなくなった。行政任せの画一的な運営では、他市に誇れる魅力ある東広島市をつくることはできないからだ。
B氏は「一昔前までは、理論付けて話をするような市議は本当に少なかった。その当時と比べると今の市議は勉強をしている。ただ、市の施策は年々専門的な内容が多くなり、政策を磨き、厚みのある質疑を行うためには不十分」と指摘する。
国会議員が深夜の会合に出席しただけで辞職・離党に追い込まれるように、政治家を取り巻く国民の目は厳しい。市議も身近だからこそ、市民から見られていることを忘れないでほしい。コロナ収束後、政治家を評価する判断基準は大きく変わる。政策提案と実行力が求められることは間違いない。2つを備えた市議の登場を期待する。
2020年12月定例会の一般質問ベスト5を選んだ。選定に際しては市幹部職員や行政に精通するプロに加え、プレスネット記者・日川の意見を交え総合的に決めた。選定基準は次の通り。
①トップである高垣広徳市長が答弁しているか。
②質問に対し具体的で明確な答弁をしているか。
③福祉・医療、教育、安心・安全など市民の生活に直結するような質問をしているか。
④市が進むべき未来の施策について質問をしているか。
参照【東広島市議会】12月定例会 一般質問スケジュール
1位 | コロナ禍での消費喚起策について 奥谷求(創志会) |
💬執行部回答 感染拡大状況などを踏まえ時期を逸することなく、市内事業者の支援策を検討する。 | |
🏫2020年、市議会12月定例会の一般質問に関する解説(千義久) 本市の特徴である、学園都市であること、観光事業の比率が低いこと、小規模な商店が多いことなどを反映した答弁となっています。市の単独事業である「キャアッシュレス20%還元事業」は効果あったものの、すでにこの事業は終わっています。酒類の販売減少や大学におけるコロナ禍の影響、飲食店の売り上げの減少などへの対策が求められています。 |
2位 | 県と県内市町の水道事業の広域連携について 田坂武文(令和会)、宮川誠子(真政倶楽部) |
💬執行部回答 水道事業の統合に参加する方が、メリットは大きい。県とも協議し早い時期に判断する。 | |
🏫2020年、市議会12月定例会の一般質問に関する解説(千義久) 県内では21市町と県が水道事業を運営しています。水道事業は人口減少による給水人口の減少や、施設の老朽化に伴う更新費用の増加などで急速に経営が悪化することが見込まれ、市町によっては経営が立ち行かなくなる恐れがあります。その課題を対処するための手段の一つが県内水道事業の経営組織を一元化する広域連携です。 東広島市内の水道管は、大田川から水が引けるようになった昭和50年代から順次整備されましたが、施設の老朽化に伴い更新が迫られています。時間を要する事業であり待ったはできません。今回の質問は、地味ではありますが、水という市民生活の根幹について問い、市側の明確な方向を導き出しています。 |
3位 |
GIGAスクールを踏まえた新たな教育の在り方 岩崎和仁(創生会) |
💬執行部回答 市がこれまで取り組んできた「独創教育」と、ICTを活用した新たな学びのベストミックスを図るよう取り組む。 ※GIGAスクール=児童生徒に1人1台のパソコンなどを整備する国の施策 |
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🏫2020年、市議会12月定例会の一般質問に関する解説(千義久) |
4位 | 誰もがICTやデジタルを活用できる社会について 加根佳基(公明) |
💬執行部回答 高齢者がスマホを身近に利用できるよう、大学生のサポーターを活用するなど効果的な対策を講じる。 | |
🏫2020年、市議会12月定例会の一般質問に関する解説(千義久) デジタル社会の構築は、政府においても最大の課題の一つとなっており、デジタル庁など、強力にデジタル化の推進に力を入れています。マイナンバーカードの推進や、行政におけるデジタル化は強力に推進する必要があります。 また、国民サイドに立ってみると、インターネットの普及もさることながら、日常生活のデジタル化は、スマートフォンの普及が必要条件となっており、デジタル社会の成否がかかっています。今回の質問は、地域社会のデジタル化の要点を突いており、意味小ある質問となっています。引き続き、デジタル社会からおいていかれる人を出さないよう、市側と市議会が連携を密にとって推進しえいただきたいと思います。 |
5位 | 市のフレイル対策プロジェクトについて 牛尾容子(令和会) |
💬執行部回答 高齢者にフレイル予防の大切さを理解してもらうため、「フレイルサポーター」の養成を始める。 ※フレイル=介護が必要になる前段階のこと。虚弱状態 |
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🏫2020年、市議会12月定例会の一般質問に関する解説(千義久) 高齢社会対策で必要なことは、長寿化する中で、健康寿命をいかに永くするかということです。加齢による心身の衰え(フレイル化)を、いかに予防していくかということは、市行政としては大きな課題となっています。コロナ禍において、中高年の方の引きこもりなどで、フレイル現象が一層拡大しており、市としては、国や県とタイアップして、具体的な対応策を実施していくことが求められています。 市側の答弁にあるように、広島国際大学の理学療法士の資格を持った先生方や、保健師、医学専門職の積極的な任用を推進するなど、「フレイルサポーター」の養成を推進していくと答弁しています。このように時代の課題を先取りし、市行政の後押しをしていくのは市議の大切な役割だと思います。 |
🔍【シリーズ】東広島の政治