新型コロナウイルスに始まり、新型コロナウイルスに終わった2020年。大きな変革の年になったことは間違いない。未曽有の経験を経て、今後、東広島はどう変わっていくのだろうか。時事通信社広島支社編集部長の阿萬英之氏、地域経済ジャーナリストの田辺裕視氏、本紙編集委員の日川剛伸が話し合った。聞き手はFM東広島パーソナリティーの間瀬忍。
――今年はコロナがキーワードの年でした。自治体のコロナ対策は。
日川 東広島市では感染防止と消費拡大の両立を図ることを念頭に、スピード感を持って取り組んでいた。東広島市独自の取り組みで印象深いのは、市内の店舗でキャッシュレス決済をした人を対象に20%を還元するキャンペーン。11月末で25億円の経済効果をもたらした。
今年2月にオープンした、中小企業に売り上げを伸ばすための支援策を提示する「ハイビズ」には、11月末現在1400件の相談があり、コロナ禍で事業者の力強い応援団になったようだ。
阿萬 県では、これまでも感染防止対策や消費喚起策に取り組んできたが、ここにきて広島市を中心に感染の急拡大が続いている。このまま広島市の感染拡大が続き県全域に広がると、経済活動の制限を強める事態になる。そうした事態に陥るのを避けるため、県は広島市中心部の飲食店に酒の提供時間を午後7時までとするよう求めるなど対策を強化した。
――コロナ禍を除いて、今年で印象に残っていることは。
田辺 中心市街地(西条栄町)に新美術館が移転オープンしたこと。今後は展覧会など中身をどう充実させるかがカギになる。
山陽自動車道の志和IC(インターチェンジ)―西条IC間に、(仮称)八本松スマートICの設置が決まったことも大きなニュース。道路整備では、2022年度中の開通を目指し、安芸区の東広島バイパスと東広島市の西条・八本松バイパスをつなぐ国道2号安芸バイパス(延長7・7㌔)の工事が順調に進んでいることも外せない。
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――今年は河井夫妻の買収事件でも揺れました。来年の選挙に影響は。
阿萬 大いにある。一つは有権者の政治不信を助長したこと。もう一つは県政界の構図が変わりつつあることだ。河井克行被告の地盤の衆院広島3区で、公明党が比例中国ブロック選出の斉藤鉄夫副代表の擁立を決めた。同党が中国地方5県の小選挙区で公認候補を立てるのは初めてだ。
田辺 東広島市でも現金を受け取った県議がいるし、現金授受をうわさされる市議もいる。4区の選挙にも影響を与えるだろう。
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――コロナ禍はデジタル化を加速させました。
日川 東広島市は今年夏に内閣府の「SDGs未来都市」に選定され、秋にはデジタルトランスフォーメーション推進本部を設置した。つまり、デジタル技術を活用しながら、SDGsの理念にのっとった、持続可能なまちづくりを展開していこうとしている。
阿萬 デジタルとSDGsの絡みでいえば、東広島市と広島大との間で「タウン・アンド・ガウン」構想を進めていて、大学内に準備室を設け、21年秋から本格的に動き出す。二人三脚でまちづくりを進め、地域のさまざまな課題を解決、市の発展を促していこうというものだ。持続可能な都市のモデルとなってほしい、と期待している。
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――来年に向けメッセージを。
田辺 (コロナ禍で)暗く沈んでいても何も始まらない。今やろうとしていることに希望を持って取り組むことが大事だ。人口が減っていく自治体が多い中で、東広島市は、2035年までは人口が増えるという推計が出ている。未来に希望が持てる都市であることを心に留めていきたい。東日本大震災でもそうだったが、絆がキーワードになる。