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【東広島の政治】高垣広徳市政の3年半を検証③

  • 2021/08/09

高垣広徳市長
カタカナの施策を、市民に身近な問題として伝えていくことは市政運営のかぎになると語る高垣市長

 

 高垣広徳市長の就任3年半を検証するシリーズも今回が最終回となる。1回目、2回目に6つのキーワードで掲載した評価はまずまずだった。さて、今回は?市民代表である市議と、選挙で市長の審判を下す市民(有権者)の評価をみる。(日川剛伸)

 

これまでの評価
「仕事づくり(イノベーション)」◎
「大学との連携」△→○
「独自のカラー」△→○
「西日本豪雨災害の復旧対策」◎
「前市長からの継続事業」◎
「新型コロナ対策」◎

 

高垣市長に聞く

日川剛伸記者
日川剛伸記者

 

 ―7割の市議が評価しています。

 市長に就任後、できるだけ議会との議論の場をつくるようにしてきた。就任後の議会の開会回数は定例会が13回、臨時会は11回を数える。他の市町と比べると多いのではないか。市長と議会は二元代表制の関係であり、互いに課題を共有しながら車の両輪のように市政運営に当たらなければならないからだ。

 (7割の評価は)こうした私の考えを理解していただいている結果かな、と思っている。東広島市では、緊張感を持った二元代表制が展開できている。

 

 ―一方、市民の政策への理解度は今一つです。

 議会でも「カタカナが多い」と指摘を受けるが、私は決してカタカナを乱用しているとは思っていない。国際化の進展などでカタカナは世の中の主流になっているし、新聞報道でもカタカナはキーワードになっている。

 ただ、市民から見ると、次から次に出てくる知らない言葉は、行政を遠い存在にする要因になる。カタカナの施策を、市民に身近な問題として伝えていくことは市政運営のかぎになる。

 

 ―どう伝えていきますか。

 まだまだ途上ではあるが、新型コロナウイルスの影響で、市民との対面が制約されている中、昨年から始めたSNSで、市民に施策を分かりやすく伝え、多くの市民とつながるよう試みている。今年からは市政通信の発行も始めた。もちろん、コロナが収束すれば、市政報告という形で、市民との対面の場を増やし、施策を理解してもらうよう努めていきたい。

 

 ―市政に無関心な市民が多いことも政策が伝わらない理由です。

 東広島市の投票率は、県内自治体の中では、ワースト1を争うほど低い。その要因の一つは、市は学生を含めた若い世代が多く、彼らと政治の世界の距離感が遠いこと。もう一つは、かつて政治への期待はあったものの、それが反映されなかったことからくる政治への不信感が挙げられる。

 これらを踏まえ、市民に政治に関心を持ってもらう取り組みの一つとして、市民協働のまちづくりを掲げている。平たく言えば、かつて9つの旧町それぞれにあった特性や課題を掘り起こし、各地域の市民と一緒になってまちづくりを進めようというもの。市民と市政の距離感を近くしたいと思っている。

 さらに付け加えれば、市民の関心事と、われわれが展開する施策にギャップがあることも、市民が市政に無関心となる要因の一つかもしれない。例えば、私がSNSに「大学との連携」「まちなかの魅力的なスポット」を書き込むと、圧倒的に「いいね」が多いのは後者(笑)。このギャップをどう埋めていくのか、悩みでもある。

 

 ―3年半を総括してください。

 西日本豪雨災害と新型コロナウイルスの感染拡大という想定し得ない状況が連続し、これらへの適時適切な対応に努めてきた。こうした中、市の10年先を見越したまちづくりの基本方針を定めることができた。市政運営の基盤づくりができ、大学との連携や仕事づくりなど、それぞれで手応えが出始めたところだ。

 

 ―二つの有事は市政運営にどのような影響を与えましたか。

 二つの有事は、今の時代は、一自治体のことだけを考える内向きの発想だけでは物事が解決しないことに気付くきっかけになった。他都市や世界にどう貢献していくのか。SDGs未来都市への選定や、DXを軸にしたまちづくりの基本方針は、そのことがベースになった。

 東広島市は、広島大の統合移転を皮切りに、国・県で2兆数千億円を投資して計画的につくってきた街。その意味で、東広島市は、外に向けて、さまざまな取り組みを発信させ、周辺の自治体に貢献できるよう、県を引っ張っていく自治体にならなければならない、と思っている。

 

 ―1期目の任期は残り半年です。

 西日本豪雨災害からの復旧については、年度内の工事完了を目指す。新型コロナ対策では、希望者へのワクチン接種を完了させ、経済対策に力を入れていく。できるだけ地域に出て市民との距離感を埋めたい。

 

 

検証テーマ 市議の評価

市議29人は高垣市政の3年半をどのように捉えているのか。
市議アンケートをもとに分析すると。

7割が評価

 自民党系、公明、労組系議員の21人が評価する(条件付き1人含む)と回答した。その理由として▽西日本豪雨災害や新型コロナへの迅速な対応▽具体的なまちづくりの方向を示して施策を展開している―などが多かった。

残る3割の見方

 「どちらともいえない」が5人、「評価しない」は2人だった。「どちらともいえない」では、有事の際の対応など、政策には評価をしつつも、「市民の望んでいる声を吸い上げていない」「評価するには時期尚早」とする声が上がっていた。「評価しない」としたのは共産、自民系各1人だった。

市長の側で考察すると

 市民の直接選挙で選ばれる市長と市議(議会)は二元代表制といわれ、対等な関係だ。つまり、市長からすると、市政運営には議決権を持つ多くの市議の賛同を得ることが不可欠。その意味では、市政運営を有利に導く市議との関係を築いているといえるだろう。

 

 

検証テーマ 市民の評価

カタカナが氾濫する政策について市民の理解度は?
市民は市長をどう見ているのか。市民50人にアンケートをすると。

政策の理解度は今一つ

 市長が発するデジタルトランスフォーメーション(DX)やスーパーシティなどのカタカナの言葉(政策)をすべて知っていると回答した人は約3割にとどまり、その内容をすべて理解していると答えた人は1割に満たなかった。市民からは「カタカナが私たちの生活にどう役立つのか、分かりにくい」という声が多かった。

市長への印象は

市民アンケート

市民アンケート

 

 5割を超す市民が「誠実・真面目」と答えた。「人は見た目が9割」と言われるが、市長の外見の第一印象が、この回答になっているようだ。ただ、実際に市長と面会した人が異口同音に話すのが「とても気さくで、愛想のある人」。市長の等身大の姿は、まだまだ市民には伝わっていないようだ。

記者の目

 これまで2回の検証で高垣市政に大きな失点がなかったことを裏付けるように、市長とともに市政運営の一端を担う市議は、7割が高垣市長の取り組みに及第点を与えた。

 市議の評価ポイントはおおむね①西日本豪雨災害や新型コロナウイルスという想定外の状況に適切に対応したこと②時代の流れを踏まえ、将来の市の方向をきちんと定めたこと③産業や雇用対策でも成果を上げ、市と経済界の連携を深めたこと―の3点に集約される。

 「1点を除けば、まさに隙のない市政運営だった」。ある市議のシンプルな言葉が、高垣市政の3年半を如実に表しているといえるだろう。

 その1点というのが、対市民との関係だ。アンケート結果でも分かったが、高垣市政の発信する政策について、市民の理解度は今一つ。ある市幹部職員が、「行政に精通する市職員ですら、市長の思いに付いていくので精一杯」と指摘するように、高度な政策は、市政に無関心な市民に政策を浸透させるどころか、さらに無関心層を増やすだろう。

 気がかりなのは、市職員の仕事へのモチベーションだ。市長は、職員以上に行政に精通しているからか、本来、部課長の領域の仕事に自らからむこともある、という。職員は、市長の思いを市民に伝える橋渡し役も担う。一部とはいえ職員の心が市長から離れるようだと、結果的に市民と市長の距離を遠くする要因になりはしないか。※市長は、職員の行動理念を策定、モチベーションを高める努力はしているが…。

 市長にとっては、「市民を知る」ことは大きな武器になる。市民との距離感が近いと、市長のもとにはさまざまな生きた情報が集まることになり、バランスの取れた市政運営につながるからだ。ましてや東広島市は外からの人口流入が続く都市、だからこそ一部の市民だけで決まる『政』であってはならない。

 高垣市長の政策は、新谷正義代議士をはじめとする地元政界や、地元経済界から評価が高い。それだけに対市民との関係が今一つなのは残念だ。そこで、高垣市長に提言だが、対外的には、もっと笑顔や愛きょうを振りまいてはどうだろうか。笑顔は対人関係を近くする潤滑油になる。筆者が望むのは新型コロナ対策のように、政財界、行政、市民が一丸となる取り組みだ。20万都市・東広島市の真骨頂ではないだろうか。

 

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